(R)amen

この後絶対に駅のトイレに行って吐こう、と思いながら食べるラーメンには大変恐縮ではあったが、飲み会の〆だと言って入店した皆の笑顔は裏切れなかった。

ドン。
わあ、いただきます。

スープおいしいよ、またあとで会おうね。
キャベツおいしいよ、またあとで会おうね。
チャーシューもおいしいよ、今すぐ出てきちゃいそうだけどまだ待ってね。出ないでね。絶対またあとで会おうね。
麺もありがとね、噛み切らないとあとでうまく会えずに胃カメラみたいになるよね。

おいしかったね〜。今日はみんなありがとね〜。

「オ"ッ」
馬鹿丸出しである。
どんなに髪や服装をバッチリ決めても便器に顔を突っ込んでいる姿に威厳などない。
しかしながら俺は自分のみじめな姿を見るのが悲しくて苦手なので、ここは気持ちを切り替え、まるで少年漫画の主人公が攻撃を喰らって吐血しても笑って口を拭うように、『へへ、やるじゃねえか』みたいな顔を便器に向け、今俺は様になっていると信じ込むことにした。
言うまでもないが俺が吐いたのは血でなくゲボであるし、悪と戦ってもいない。馬鹿丸出しである。

ああ無情、すべてに合掌。

俺は壁の水洗ボタンを押して、家の布団を目指した。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?