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世界のミチバタから その1 スウェーデン編 ー安永哲郎

こんな状況なのでイベントとしてのミチバタはしばらく止まってしまったけれど、月に一度はメンバーで話し合いを続けています。
これまでの流れとこれからの予定はトクマルさんが整理してくれた通りですが、今朝も緊急事態宣言の一ヶ月延長が報じられたりなど、ここ最近の様子を見ているだけでもまだまだ出口の見えないトンネルを歩く日々は続きそうな予感です。
もう一年を越えようとしているこの状況下、みなさんはどのように過ごされていますか?こんな時、しばらく会っていない友人・知人から不意の便りが来るとうれしいものです。

先日、しぜんの国のオンラインイベント「サウンド園庭」の企画で、数年前にオーストラリアのアデレードに移住した同僚とひさびさに会話をする機会がありました。南半球は初夏のおだやかな気候で、自宅の裏に広がる公園から耳慣れない鳥のさえずりがのどかに聞こえてきます。当然のように今どうしてる?の話に。数日前にたった一人の陽性者発覚で街全体が即日ロックダウンになり、それが誤報だとわかるとすぐさま制限は解除され、混乱なく平時に戻ったとのこと。不安は同じように持ちつつも、先を見通す眼差しや判断がこちら側とはずいぶん違うなあと感じました。

そんなこともあって、顔を高く上げてもっと広々とまわりを見てみようと思い立ち、しばらく会ってない遠くの友人に連絡をとってみようと思い立ちました。今回のお相手はスウェーデンはストックホルムを拠点に活動する音楽家のヨハン・バットリングさんです。

ヨハンさんはベーシストとして、Tapeという素敵なトリオをはじめ、Wildbirds & Peacedrumsというバンドのアンドレアス・ウェルリンさんとマッツ・グスタフソンさんとのトリオFire!や、坂田明さん&ポール・ニルセン・ルーヴァ(日本ではラヴと表記されますが、実際の発音に近いのはルーヴァだそうです)さんとのArashiといったグループで世界中をツアーしてまわって暮らしていました。東京にもほぼ年に一度はやってきて、PIT INNで演奏することが多かったので一緒に新宿界隈でご飯を食べたりと、かつては距離を感じない程度には顔を合わせていたものです。
感染の被害も大きいと聞くスウェーデンにあって、東京はおろかどこにもツアーに行けなくなってしまった彼はどうしているんだろう?メッセージを送るとすぐ返事が返ってきました。


安永:ヨハンさん、久しぶり。どうしてますか?僕は多くの時間を家族と過ごすことにあてられているけれど、長いことコンサートに出たり観たりすることがなくなってしまいました。元の暮らしに戻って、また会える日が来るまではもうしばらくかかりそうですね。

ヨハン:連絡ありがとう!いろんなことがガラッと変わってしまったね。僕らはゆっくり田舎の方に住まいを移そうとしているよ。ノルウェーとの国境のすぐそばなんだけど。もっと心穏やかに暮らせるようになるといいよね。

安永:あらま、ストックホルムを離れたの?そこがどんな場所でどんな暮らしぶりなのか気になります。コロナがきっかけですか?

ヨハン:家を買ったのは5年ほど前。長男が生まれる直前だよ。場所はノルウェーとの国境に近い中西部のヴェルムランド。とても田舎で、3ヘクタール(3万平米) の小さな森と湖があるところ。僕たち家族はこの土地がとても気に入っていて、次男が生まれた後はストックホルムよりもそこで過ごすことが多くなったんだ。温室を建てて、前よりもたくさん野菜を育て始めたよ。その後、Covidが拡がって、2020年の3月からはずっとヴェルムランドに滞在しているんだ。

安永:良さそうなところですねえ。写真(註:トップに貼ってます)もありがとう。いい景色! ところで以前はよくツアーで東京に来てくれた時にご飯を食べに行ったりしていたけど、今は海外に行くことも叶いませんよね。

ヨハン:僕のフィアンセ(註:スウェーデンは婚姻関係を結ばずに家族になることが一般的です)は自宅で仕事をしていて、僕はたまに国内でコンサートやレコーディングに参加しているだけで、海外ツアーはしていないから、かなりの変化だといえるよ。今は子どもたちのことで本当に忙しいから、薪割りや雪かき、料理など家のことで手一杯だからあまり時間がなくて。ともあれ、僕らは都市のストックホルムと田舎のヴェルムランドという2拠点を持っているという幸運な立場にある。都会を離れていてもプレッシャーは全く感じないから、とても楽な気持ちで日々を過ごしているし、自然の中にいることで新しい生活にも適応しやすいんだ。

安永:なるほど、偶然だったとはいえ、こういう状況で安心して暮らすベースができていたんですね。今はどんな風に音楽を続けていますか?

ヨハン:夜は何かしたいと思って少しだけ勉強をするようになったんだけど、なかなか集中できない時もある。Fire!では、去年も今年も予定がすべてキャンセルになってしまったけど、週に一度はSkypeで会って世間話をしているよ。マッツはオーストリアで、アンドレアスはスウェーデンの西海岸と、みんなそれぞれ違う場所に住んでいるから、何かしらのルーティンを設けてつながり続けるのはいいことだと思う。僕はもうすぐソロのコントラバスのレコーディングを計画しているほか、アンドレアスやオーレン・アンバーチと一緒にとてもいいアルバムを完成させたばかり。この春にリリースされるといいなあ。なんにせよ、ツアーに戻るには長い時間がかかると思う。これまで世界中を飛び回ってかなりの量のツアーをしてきたんだけど...こんな状況になったことで、音楽やツアー以外のことにも目を向けるようになった気がするよ。
2年前、ノルウェーでのフェスの後、坂田さんがヴェルムランドに遊びに来てくれたんだ。釣りをしたり、森の中を散歩したり、とても特別な時間だった。君も家族で来れる時があればいつでも大歓迎だよ。

安永:ありがとう。その日を楽しみに!

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