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ユダヤ美術館に行って来た話

興味深いタイトルの美術展が5月から始まったので、早速行って来ました。先週行ったら平日なのに人が並んでいて入場を断念したので、早めに行きました。私を含め、みんなセックスが気になるようです。

けっこう並んでます

入ってみてわかったのですが、入り口で持ち物をX線でチェックしています。そのため、入り口がボトルネックとなって行列が発生するのですね。ユダヤ系施設はテロの標的になることが多いので、必要な措置なのでしょう。

とても広い建物なのに、入場料は無料です。自分たちの歴史や文化を世間に広く知らしめたいという意図があるのでしょうね、きっと。あと資金が潤沢なんだなというのも感じました。いずれにせよ、建物そのものもコンセプトがあって凝った作りになっているので、見て回るだけで面白いです。

常設展のほうのデザインが特にいけてます

カフェがあるホールには謎の物体がぶら下がっていました。

一見なんだか全くわかりません

よく見ると、目玉やおっぱいやお尻やちんこの寄せ集めでした。わかりにくいのですが女性器も入っていますし、ところどころ、うんこやその他いろいろもはみ出ています。ユダヤ美術館って保守的で気難しい印象があったのですが、めちゃくちゃです。いい意味で期待を裏切られました。ボーデ美術館以上に攻めてます。展示品の中で一番感心したのがこのオブジェでした。

これ作るのも大変だったと思いますよ。アーティストの創造力が異次元です。岡本太郎もびっくりだよ。なに考えてるんだか

セックス展は結婚をテーマに始まるので、スタートはわりにおとなしいです。セックスは夫婦の義務だとか、とにかく子供を作ることが大事とか、婚姻関係にある異性間の性行為が宗教的に重要であることが語られます。同性間やLGBTQのセックスを宗教的にどう解釈するかは、現代神学上(?)まだ結論が出ていないそうです。ひるがえって我が国の神道でそんなこと気にしてますかね? 神様がセックスのありようまで口出ししてくるのはなかなか窮屈そうだなと思いました。しかし、国がない民族の生き残り戦略として産めよ増やせよは有効だと思います。元はそれなりの理由があってセックスのあるべき姿(時期とか回数とか禁止事項とかいろいろ)も規定されることになったのでしょう。

そこから宗教的セレモニーの写真やユダヤ人アーティストによる様々な作品が紹介されていきます。

Zoya Cherkassky-Nnadiの「Unorthodox」。保守派のユダヤ人家族とタトゥー姉ちゃんの遭遇を描いています。正統派ユダヤ人にとってはお肌見せすぎスタイルで、皆さん戸惑っています

変わりどころとしては、1950年代に大人気だったというポルノ小説も展示されていました。ポルノはポルノでも、強制収容所が舞台になったポルノで、なかなかきわどいです。ドイツやオーストリアでそんなポルノがはやったら大問題になりそうですが、当事者(ユダヤ人)がポルノ消費する分にはまぁいいんでしょうね。解説にもユダヤ人が過去の苦しみを処理する過程にポルノがあったみたいなことが書かれています。

強制収容所の女看守が連合国側の囚人をいじめるSMものだそうです(説明文はユダヤ美術館展示のもの)

セックス展を最初から最後まで見た感想ですが、タイトルから想起されるほど過激な内容ではなかったです。これなら(一部の)浮世絵のほうがよっぽどすごいです。そして内容は至って真面目なものでした。タイトルにびびらず、行ける方は行ってみたらいいのではないかと思います。老若男女問わず、色々な人が見に来ていたので恥ずかしがらなくて大丈夫です。

サブタイトルの「ユダヤのポジション(Jüdische Positionen)」というのが体位のことかと思ったら、「セックスに対する姿勢・態度」くらいのニュアンスでした(多分)。体位まで細かく宗教で決まっているのかなと思ったら、そういうわけでもないらしい。
開催は2024年10月6日まで。詳しくはユダヤ美術館のウェブサイトを参考にどうぞ。

Nicole Eisenmanの「Is it so」。何がそうなのかわかりませんが、そういうことなんでしょう。
Nicole Eisenmanの「I'm with Stupid」。これはどう解釈したらいいのでしょうか……。

あと、今回はセックス展だけを紹介しましたが、常設展も充実しています。1日では回りきれないほど多くのものが展示されているので、そちらもお勧めです。

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