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サルが空からやってきた 〜10人の証言〜

〜さかもと だいすけ(小学1年)の日記より〜
あさ、おきると大きなサルのにんぎょうが、大きなおみせがあったところに立っていました。パパもママもびっくりしていました。ぼくもびっくりしてこわかったけど、泣きませんでした。ママにえらいねとほめられました。

〜日野山 武志(西川市市長)の演説より〜
西川市と東山市の境に巨大なサルの人形ができて3日が経ちます。現在、各機関が総力を上げて調査をしておりますが、誰が何の為にどのようにして作ったのか、未だに全容は解明されておりません。私たちは国の協力を仰ぐと共に、東山市の浦部市長と今まで以上に協力して、一刻も早い謎の解明及び人形の撤去を行う所存でございます。

〜風間 隼人(西川市在住・大学生)のLINEより〜
愛莉、信じられないかも知れんけど、親が会ってみたいって言ってるわ。西東同盟から3ヶ月経って、大分そっちに対する見る目も変わったみたい。あんだけ東山アンチだったのにな。これもあのサルのお陰だし、なんかあのサルが可愛く見えてくるわw

〜新世紀カスプーチンのTwitterより〜
こないだ、あのサル作るバイトしたって友人から聞いたんだけど、日野山の命令だったらしい。一夜であれ作るってバイトで高額だったらしいんだけど、今までバイト代支払われてなくて、暴露www。自分で作れって言っておいて、撤去するのに東山と力合わせたいとか、まじイミフだし、キモいから拡散希望。どおりで半年も経つのに撤去進まんわけだわ。まじ西川の奴らサル以下で草も生えんわ。

〜ニュース009の街頭インタビューより〜
キャスター:あの物体ができてもう半年以上経ちますが、生活に影響とかありますか?
東山市の女子高生:なんか最初はみんなで可愛いとか言ってたんだけど、あれ西川市の人たちが作ったって聞いて、急に怖くなってきた。そういえば、西川市の友達で、いじめられて学校来なくなった子、何人かいたっけ。そういう面では影響あるかも。
キャスター:あの物体を日野山市長が作らせたって話が出ていまが、どう思いますか?
西川市のサラリーマン:そんなわけないでしょ?あんなの一夜で作るなんて絶対不可能ですよね?あんなのデマだってすぐ分かりますよね?正直、あれを信じている人たち、大丈夫かなって思っちゃいますね。

〜竹本 愛莉(東山市在住・大学生)のLINEより〜
うちの両親、西川市の人たちがあれを作ったって本気で信じてるみたいで、隼人と別れろって言ってきてる。こないだは私の友人が、西川駅で知らないおじさんに嘘つきって言われて急に殴られたらしいし。すごく怖い。

〜ピテーコス神山(新興宗教デウスアープ・教祖)の演説より〜
サル神様が来られてちょうど一年、サル神様が私の夢に現れ、私にこう告げられました。サル神様を崇め、祈りなさいと。そうすれば、醜いイザコザも忽ちになくなり、幸福が訪れると。サル神様はここに来たことで、二つの市がいがみ合っていることに非常に心を痛めておられます。サル神様は誰が作ったものでもない。彼自身が創造主なのです。サル神様は私たち人間の負の感情を吸収し浄化する為にあそこにいらっしゃるのです。さあ、お金、地位、名声、人の業を生む罪深き因縁をサル神様にお渡しし、きれいな心に浄化して頂きましょう。

〜さな@デウスアープを撲滅せよ(猿神教・信者)のTwitterより〜
あなたの信じるデウスアープで誰か救われましたか?私はデプスアープに入ってわずか半年で家も家族も仕事も全て失った人を知っています。あんなのはペテン師です。でも私達、猿神教は猿神様がいらっしゃる遥か昔から、彼を崇め、彼が来るという予言を信じて待ち続けていたのです。もし、困ったこと、不安なことがあったら、私達に相談して下さい。必ず邪教デウスアープからあなた方をお救い致します。

〜布施 鏡太郎(今様綺談・ライター)の記事より〜
サルの人形がこの地に降り立ってちょうど二年。その巨大な人形は忽然と姿を消した。その跡地には今は何もない。ただ、デウスアープと猿神教の二代宗教による争いは今も続いており、彼らのいう御尊体がなくなったことで、その対立はむしろ激化したとも言える。それは信者ではない、東山市と西川市の市民も巻き込み、日々暴動や傷害事件が起きている状態である。その恐怖から街を出るものも多く、急速にゴーストタウン化が進む深刻な状況となっている。

〜阪本 大介(大学教授・50代)のボイスメモより〜
巨大なサルの置物が私の市と隣市の境にできてわずか5年で私の街は壊滅し、奴らの住処となった。だが、本当の恐怖はそれからだった。私の街で起きたことはその始まりに過ぎなかったのである。それを皮切りに世界中で同様のことが起き、やがては国と国との争いまで引き落とした。世界中で暴動が起き、それはやがて第三次世界大戦にまで発展した。人のいなくなった世界を彼らは次々と占拠していった。ここももう危ない。二度と同じことが起きないように、このボイスメモと私がまとめた資料の全てをここに置いておく。これを見つけてくれた人に告ぐ。どうか、私達が生きていたこの地球のことを、私達の過ちを忘れないで欲しい。

〜ジョージ・テイラー(宇宙飛行士)の手記より〜
シーザーが見つけてくれた100年以上前の阪本氏のボイスメモと資料のお陰で、何故地球が彼らに占拠されたのか、彼らが何者なのかの理解を急激に進めることができた。これがシーザーとの最後の仕事だ。思えば、不時着した地球で生まれたばかりのシーザーを見つけ、ここまで育つまでに色々なことがあった。よく考えれば、彼には今までスパイのような事をさせていた。大変申し訳なく思う。だからこそ、彼が群れに戻りたいという気持ちを受け入れ、送り出すことにした。心配なのは彼が群れに馴染めるかどうかだ。言葉を話し、人間のように暮らす猿たちに占拠された、かつて地球と呼ばれた惑星。私はこの惑星を猿の惑星と名づけることにする。いつか私達も同じ運命を辿るかも知れない。その前にこの惑星を、あの猿達を、何としてでも消滅させなければならない。

〜シーザー(チンパンジー)の演説より〜
私は今まで人間に育てられてきた。こことは別に彼らの住む惑星がある。いつか人間達は我々を滅ぼしに来るだろう。そうなる前に、再び彼らの惑星を制圧しにいかなければならない。私と一緒に来てくれるものはいるか?私達の生活を守る為に再び立ち上がるのだ。

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