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ウィル・スミスさんの事件について思うこと

アカデミー賞授賞式で俳優のウィル・スミスさんが、プレゼンターだったコメディアンのクリス・ロックさんの発言に怒り、舞台上で平手打ちするという出来事があった。

わたしが興味深かったのは、日本とアメリカの反応の違いだ。

日本ではウィル・スミスさんの行動を理解・支持する反応が多く、アメリカの人は彼を非難する反応が多いのだという。

なぜその違いが生じたのか、そしてわたしがこの事件に思うところを書いてみたい。

ジェイダさんの病について

日本では「病気を患うジェイダさんのヘアスタイルをクリスさんが揶揄した」という報道で事件を知り、クリスさんの言動に憤りを感じた人が多いように思う。

しかし、あの場に出席していた人々やリアルタイムで授賞式を見ていたアメリカの人々は、全員がジェイダさんの病気について知っていたわけではない。そのことは会場の反応を見ればわかる通りだ。

また、アフリカ系の女性は、ごく短いヘアスタイルにする人の割合が、ヨーロッパ系やアジア系と比べると多いと思う。そこから、クリスさんは、あのヘアスタイルが「複数ある選択肢のうち、彼女が好んで選択したスタイル」だと思ってしまったのかもしれない。(このことについては、アフロヘアの美しさを否定されてきた歴史もあり、他人種のコメディアンであればまずアフリカ系女性のヘアスタイルに言及することはなかったと思う。)

「ジェイダ、愛してるよ!G.I.ジェーン2を観るのを楽しみにしてる」 
以下のツイートより和訳をお借りしました

会場にいる人々も、他人種ではなく同じアフリカ系であるクリスさんのジョークだから安心して笑ったのだと思う。ジェイダさん以外。

毎年恒例の強烈な出席者いじり

わたしはアメリカで行われるアカデミー賞・グラミー賞・トニー賞などの授賞式を見るのが大好きで、できる限り見るようにしている。

そこで思うのだが、特に司会者がいるときのアカデミー賞など、日本人のわたしが聞くと「そんなこと言っていいの!?」とぎょっとするレベルの強烈な出席者いじりが必ずある。

日本だったら大御所俳優のスキャンダルをいじるなどなかなかないと思うけど、アメリカの場合「みんなが知っている話題のトピックをスルーする方が不自然で、際どいところまで突っ込んでこそ一流コメディアン」的な風潮があるように思う。

今回、プレゼンターとして登壇したクリスさんもコメディアンで、ジェイダさんに言及する前にも、別の出席者をいじっている。

ジェイダさんの病を知らない人々は、毎年恒例の辛口ジョークに対して突如「舞台に上がり平手打ちをする」という暴力が飛び出したことに驚いただろう。

「良い暴力」はあるか

わたしは個人的に、どんな理由があっても暴力に訴えることは良くないと思うし、非難されるべきだと思う。

今回のウィル・スミスさんの行動を肯定しながら、ロシアがウクライナに武力侵攻することや過激派のテロ行為を否定するのは矛盾している。

多くの人にとって理解できなかろうが、ロシアにもテロ組織にも理由があるし、正義がある。かつての日本のように。

「先に言葉の暴力で攻撃したのはクリスさんの方で、ウィルさんはそれに対抗しただけ」という考えもあるかもしれないが、言葉に対抗するなら言葉を用いるべきだ。

個人であろうが、国家であろうが、何かを訴えるときに暴力という手段に出ることを肯定してはいけない。だからわたしは、今回のウィルさんの行動もあってはならないことだと思う。

「容姿いじり」をもう笑わなくていい

一方で、ウィルさんの行動の引き金となったクリスさんのジョークも「他人の容姿を笑いのネタにする」という旧弊な考えから脱していれば、ジョークにはならなかったはずだ。

「ジェイダさんの病を知っていればジョークにしなかった」という可能性もあるけれど、他人に起こる出来事をすべて把握することなんて不可能だし、他人がどう感じているかを逐一知ることもできない。

容姿というのは本人と切っても切り離せないものであり、ときに他者の想像を絶するようなコンプレックスを生むこともある。全員が尊重されるべきものであり、決して笑いにはならない。

クリスさんがジョークを言ったとき、会場の全員が笑った。ぶっちゃけ、あの瞬間はウィルさんも笑ってた。

ただ一人、ジェイダさんだけが辛そうな表情をしていた。

それに気づいたウィルさんは、彼女が傷ついたことを察知したのだろう。

もしも、わたしが容姿いじりをされたら、その瞬間は空気に流されてヘラヘラ笑ってしまい、後から怒りがこみ上げてきたかもしれない。

あの場で表情に出したジェイダさんは素晴らしいと思う。

「容姿いじりなんて少しも面白くない」

そのことをもっと声に出していい、笑わなくていい、不快であることを表現していい。


暴力も容姿いじりも、もうたくさん。そんなものに価値はない。

それが世界の共通認識になることを願ってやまない。

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