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[英詩]Seamus Heaney, 'Rilke: The Apple Orchard'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

リンゴがおいしい季節になりました。みなさま、いかがお過ごしですか。

今回はみずみずしいリンゴの果樹園をうたった詩を読んでみましょう。

書いたのはノーベル文学賞を1995年に得たアイルランドの詩人シェーマス・ヒーニです。

ノーベル文学賞は戯曲や歴史文学、エセーなど多くの分野にまたがりますが、詩人で受賞したのは34人です。1901-2016年にノーベル文学賞を受賞した109人中、約3分の1を占めます。

34人の詩人のうち英語で(も)書いた詩人はそれほど多くありません。しかし、英詩の伝統を反映して、文学賞の中で最も人気があるジャンルです。ちなみに、現在、ノーベル文学賞受賞者の中で最も人気があるのは、詩人ラビンドラナート・タゴールです。タゴールはベンガル語と英語で詩作したのですが、ノーベル文学賞授賞理由の中にタゴール自身の英語で表された詩想が挙げられています。

ヒーニのリンゴ果樹園の詩はリルケがドイツ語で書いた詩の翻訳です。ドイツ語の圧縮した詩的言語をヒーニがどのように料理しているのでしょうか。ヒーニは自作の詩を書く以外に数多くの言語から翻訳しており、中には『ベーオウルフ』のように、原語の古英語よりむしろヒーニの現代英語訳の方が文学史に採用されるケースもあるほど、翻訳詩としての水準が高いものがあります。

目次
原詩
日本語訳
構文
韻律
解釈
リルケのドイツ語詩

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(201612)」へどうぞ。

この継続課金マガジンは月に本配信を3回配信します。そのほかに副配信を随時配信することがあります。本配信はだいたい〈英詩の基礎知識〉〈英語で書かれた詩〉〈歌われる英詩〉の三つで構成します。2016年11月から主要な内容をボブ・ディランとシェーマス・ヒーニでやっています。英語で書く詩人として最新のノーベル文学賞詩人たちです。

英語で書かれた詩のバックナンバーはこちらをご覧ください。

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原詩

Rilke: The Apple Orchard
Seamus Heaney

Come just after the sun has gone down, watch
This deepening of green in the evening sward:
Is it not as if we'd long since garnered
And stored within ourselves a something which

From feeling and from feeling recollected,         5
From new hope and half-forgotten joys
And from an inner dark infused with these,
Issues in thoughts as ripe as windfalls scattered

Here under trees like trees in a Dürer woodcut –
Pendent, pruned, the husbandry of years        10
Gravid in them until the fruit appears –
Ready to serve, replete with patience, rooted

In the knowledge that no matter how above
Measure or expectation, all must be
Harvested and yielded, when a long life willingly    15
Cleaves to what’s willed and grows in mute resolve.


日本語訳

リルケ「りんご果樹園」
シェーマス・ヒーニ

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