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[英詩]1分で読めるディランのライム(2)

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

※英詩のマガジンの副配信です。

お忙しい方のためのディランのライム集ということで始めたシリーズです。が、今回は、ある歌のライムについて、マガジンの主配信の時より掘下げて考えてみたいと思います。

それは、「はげしい雨が降る」'A Hard Rain's A-Gonna Fall' です (1963年のアルバム 'The Freewheelin' Bob Dylan' 所収)。〈(押韻は)問いの部分がカプレットになっている(son - one)ところにのみ見られる。あとの行は特に押韻していない。〉と書きました。一般にもそう見なされていると思います。つまり、各連の冒頭の2行以外は押韻していない、ディランにあっては珍しい歌と捉えられています。

が、本当にそうなのでしょうか。それについて再び検討してみます。ただ、長い詩なので全部取上げると、表題に偽りありになるので、最終連のみ、ここでは考えてみます。

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リクスの校訂版テクストで、'A Hard Rain's A-Gonna Fall' の5連は次のようになっている。

And what’ll you do now, my blue-eyed son?
And what’ll you do now, my darling young one?

I’m a-goin’ back out ’fore the rain starts a-fallin’
I’ll walk to the depths of the deepest dark forest
Where the people are many and their hands are all empty           5
Where the pellets of poison are flooding their waters
Where the home in the valley meets the damp dirty prison
And the executioner’s face is always well hidden
Where hunger is ugly, where the souls are forgotten
Where black is the color, where none is the number                 10
And I’ll tell it and speak it and think it and breathe it
And reflect it from the mountain so all souls can see it
And I’ll stand on the ocean until I start sinkin’
But I’ll know my song well before I start singin’
 And it’s a hard, it’s a hard, it’s a hard, and it’s a hard           15
 It’s a hard rain’s a-gonna fall

リクスの校訂版は押韻形式を浮き彫りにする字下げが施されているが、本テクストに関しては冒頭の2行のカプレット (son / one) 以外には押韻を認めていないことが分る。確かに、見たところ押韻は見当たらない。

だが、本歌は、各行が別々の歌の一部であることをディラン自身が明かしている。その元の歌は今に至るまで発表されていない。

すると、ひょっとすると、通常の行と行の間ではなく、行の内部に韻が隠されている可能性がある。

この種の韻は行内韻 (internal rime) と呼ばれる。ディランに深い影響を与えたエドガー・アラン・ポーが得意とした韻であることが知られている。

行内韻についてはどうかという目で本歌を見てみよう。

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