[書評] 吉野奏美氏の近著
吉野奏美『霊感体質かなみのけっこう不思議な日常 10』(三栄書房、2021)
この世は仮想空間で真実はその外側にある
本書では著者が知ったさまざまの人物の言葉が紹介される。その中で、サンジェルマン伯爵が仮想空間のことについて始めに発言する。
この世は仮想空間で真実はその外側にあるのです!
(64頁)
同様の趣旨は他の登場人物たちも発言する。いろいろな譬えを使っても説明される。
が、はっきり言って、この言葉を理解するのは通常の3次元思考では難しいかもしれない。
この世が3次元の世であるという前提を置くと、その外側のことは3次元の渦中にある者にはわからない。
したがって、上の言葉がわかるのは、例えば5次元の存在であろう。
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ところで、この種の言説では〈次元〉の語がよく使われる。が、これはそのままでは理解しにくい。なぜなら、通常の枠組で1次元、2次元、3次元までは理解できてもそれ以上の次元は認識できないからだ。もちろん、純然たる数理モデル的な思考を、あるいは物理学的な思考をすれば別だ(例えば10次元時空を考える超弦理論など)。
しかし、上の発言で意味しているのは、そういう種類の〈次元〉のことではない。
では何か。英語で表現すれば、おそらく density(密度)になる。通常の〈次元〉の場合は dimension なので、違う言葉である。
だが、これらの用語の問題は、ここでの本質ではおそらくない。
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この世は仮想空間で真実はその外側にあると、サンジェルマン伯爵が言うとき、問題は、その認識がこの世に属さないことだ。それを認識するのはこの世の外側にいる者である。
では、我々にその認識はできないのか。そんなことはない。認識はできるのである。ただ、そのためには、著者の言葉を借りれば、〈目覚める〉必要がある。
どうすれば〈目覚める〉ことができるのかは、本書ではあまり掘下げて書かれていない。が、著者のブログでは、〈身魂磨き〉をすべしと繰返し強調している。日月神示に通じる言葉だ。つまり、その(覚醒の)方法は、自らの魂に問うことによって得られる。
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本書の特徴は、ある意味で(古くからの)日本にある考え(日月神示など)だけでなく、宇宙的視点も入っている点だ。その視点を提供するひとりが、プレアデス星団の銀河連合のメンバー、「リリーちゃん」(リ$#&”)だ。だが、この人物の観点については、版元編集部の宇宙人嫌いにより、最小限のことしか書かれていない。せっかく、2021年の時点で必要なことを伝えようとしていたのに残念である。本書以降に著者の著作はないので、本しか知らない人にとっては、その後の展開はわからない。
稀代の導師である著者の考えを容れるだけの視野の広さが編集者にあればと思う。
ただ、本書に含まれる内容だけでも、繰返し熟読すれば、得られるところは大きい。コミックエッセイという親しみやすい形式を取っているので、だれでも理解できる伝え方になっている。
以下、本書のなかで、これからの人生のヒントになると思われるところを挙げる。
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恵比寿様は3つのことを伝える。
七福神の中で恵比寿様だけが日本に由来する。大黒天、毘沙門天、弁財天はヒンドゥー教に、福禄寿、寿老人は道教に、布袋は唐の仏教にそれぞれ由来する。
恵比寿様が伝える3つとは次の通り。
①「いけす」は大海になる
②自分をアホと認めなさい
③なぜ「できない」と思うのか自問しなさい
著者が友人から恵比寿様にお願い(息子の受験、お金)を申上げてくれと依頼され、伝えたら上記の答えが返ってきた。
恵比寿様は左手に鯛をかかえ、右手に釣竿を持ったおなじみの姿で現れた。一般に思い描かれる姿(下)とは違い、20代後半のイケメンとして現れたという。
この恵比寿様の答えは本書110-118頁に漫画で展開される。まさに漫画でしか描けない内容で、評者にはそれを言葉にする力がない。
簡単に説明を付加すると、①の「いけす」とは、人は自分を「いけすの魚」のように思っているということ。餌は与えられるものと思い、自分では努力しない。恵比寿様は、「いけすの魚」ではなく、鯛のように自ら大海を泳いでいき、〈自ら勝ち取る努力〉をしなさいと言うのだ(111頁)。
本書の主題に即して言うと、いけすは3次元、大海は5次元となるだろう。
いけすが大海になって初めて、〈人間は考え方が変わるかもしれん〉と恵比寿様は言う(117頁)。
これからは〈今まで“いけす”でしか生きられんかったんが ゲートが開いて誰でも大海に出られるようになる〉と(116頁)。
サンジェルマン伯爵の言葉に即して言うと、〈この仮想空間も終焉を迎えようとしています〉と(118頁)。これは空海の言葉。
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ここで、自分の将来を真剣に考えてみることが重要になる。なぜなら、〈5次元の世界は思考したことが現実としてすぐに起こる〉から(11頁)。これは「リリーちゃん」の言葉。
そこで、著者は〈子供の頃、こんな事をしたいと思っていたこと、時間ができたらやってみたかったことなど、小さな夢から大きな夢までノートに書き出〉すよう、勧める。
すぐには思いつかないという人のために、著者は自身の夢、すなわち未来都市を作ることについて語る。
こうした夢を〈考えるだけで本当にワクワクする〉という(128頁)。
そうなのか。じゃ、自分でもやってみるか。小さいほうから言うと、おいしいケフィア作り、少し大きなことなら、イエスの時代のアラム語習得、かつてのようにアイルランドのエラハタスにまた行くこと、最終的には「ただいま」とソースに帰還し、なつかしい人びとと楽しく語りあうこと、くらいかな。確かにワクワクする。だけでなく、嬉しくなる。
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