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[書評] Emerald Tablets

Thoth, 'Emerald Tablets' (Brotherhood of The White Temple Inc., 2016)

Thoth, 'Emerald Tablets' (2016)

『エメラルド・タブレット』として知られる書の原典

世界最古の聖典とも言われる『エメラルド・タブレット』(英語では 'Emerald Tablets' と複数であるのに注意)の英訳原典がこれ。

もともと、1939年に Brotherhood of the White Temple (BWT) から刊行された書。原題は次の通り。

Doreal, trans., 'The Emerald Tablets of Thoth-the-Atlantean (BWT, 1939)

冊子体で刊行されていたが、正式版が電子書籍としても読めるので、紹介する。なお、同じ題名等で、他に数多くの電子書籍版が存在するが、「海賊版」である。中には、〈詩〉の形に組み直したものまであるが、原典は散文の形である。

本書(電子書籍)には、Doreal 師による英訳と、そこからスペイン語に訳したものとが収められている。

本書の関連では、Doreal 師による釈義の書が、冊子体のみで存在する。

Doreal, 'An Interpretation of the Emerald Tablets Together with The Two Extra Tablets' (BWT, 1948)

以上のすべて(Doreal 師による英訳、Doreal 師による釈義)を日本語訳し、さらに日本版独自の注解も加えた書もある。

アトランティス人トート著、M・ドリール博士編、林鐡造訳『エメラルド・タブレット』(霞ヶ関書房、1980)

現代において、本書に関心が寄せられるのは、BWT で形而上学を修めようとする人が本書を学ぶ場合以外には、主に2つの要因があるだろう。

一つは、伝説的にヘルメス・トリスメギストス(Hermes Trismegistus)の作とされた『エメラルド・タブレット』(英語では 'Emerald Tablet' と単数であるのに注意)という別の書と混同された場合。内容が異なるので注意したい。

いま一つは、英国の「作家」デイヴィッド・アイク(David Icke)らが存在を主張する、"悪い宇宙人"としての〈爬虫類人間〉(レプティリアン)説のソースが本書とされていること。

ここでは、後者について、簡単に記しておく。

アイクがその説に関連して 'Emerald Tablets' に言及したのは、著書 'Children of the Matrix' (2001/2017) の第8章 'The Shape-Shifters' においてだ。アイクは BWT の正規版を用いず、ネット上の海賊版を引用している。

In the form of man moved they amongst us, but only to sight, were they as are men. Serpent-headed when the glamour was lifted, but appearing to man as men among men.
(Tablet VIII 'The Key of Mysteries')

つまり、見たところ〈人間〉の姿で現れるものの、〈魔法〉が解ければ蛇頭だという。

アイクらの主張が馬鹿げていると考えて、そのソースである『エメラルド・タブレット』までおかしなものと考えるのは、筋が違う。

ただし、公平のため記しておくが、『エメラルド・タブレット』の上記の箇所あたりのアイディアには、先行する小説(H. P. Lovecraft や Robert E. Howard などの作品)の影響があるという指摘がある。

仮にこれらのアイディアが「作家」たちの作品と類似するとしても、本書が扱う超古代の事柄がおかしなものとするのは、やはり筋が違う。

本書そのものについてほとんどふれなかったが、著者は、本書によれば36,000年前のアトランティスの祭司王 Thoth であるという。Thoth がアトランティスの沈没後に、植民地をエジプトに建設した。自分が建設したギゼーの大ピラミッドの中に〈古代の智慧〉とアトランティスの記録を隠した。それらの智慧の一部が本書に収められているが、現代文明とはあまりにもかけ離れているので、理解は容易ではない。が、古代の神秘につらなる智慧に関心があるひとなら、本書の電子書籍版は持っていても損はない。

#書評 #エメラルドタブレット

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