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[書評]都市伝説7 (追記あり)

関 暁夫『Mr.都市伝説・関暁夫の都市伝説7 ゾルタクスゼイアンの卵たちへ』(竹書房、2019)

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いろいろな意味でおもしろい。

本にも工夫がこらされていて、飽きさせない。

発見が多い。

TV番組「やりすぎ都市伝説SS~Mr.都市伝説 関暁夫 外伝~」(テレビ東京、2019年12月28日) の内容と大筋で同じだが、情報の細部や、展望の全体などについては本書のほうがはるかによく分る。

現代の世界で起きていることについての鋭い洞察がちりばめられており、それが大きな見取り図のなかに配置されているので、世界がダイナミックに見えてくる。

一例を挙げると、SDGsがある。国連が2015年に採択した 目標 だ (Sustainable Development Goals)。「持続可能な開発目標」という日本語訳が使われている。

17の目標が公開されており、日本でも目にする機会がある。先日、電車に乗ろうとしたら、車体に SDGs が描かれていた (下)。

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本書には18番めの目標が載っている。重い目標だ。公式には2030年以降に明らかになるという。本書とは違う説もある。本書の情報が正しいかどうかはその時点になれば分る。

念のため、英語版の SDGs も掲げておく(下)。

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ひとつ本書を読んでいて気づくことがある。本書に書いてあることは、他の資料で確認できることも多いが、本書ならではの内容については、確認がむずかしい。インターネット上などでは見つけられないことが多い。

そのことと、本書が電子書籍で出ていないこととは関係があるのかもしれない。だいいち、本書のつくりからして、電子書籍にするのはたぶん無理だろう (途中で本の上下が変わる)。世の中には電子情報になっていないが大事な情報があるのはおそらく確かだ。本書のような情報が電子化されていないことにはたぶん理由がある。

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[途中で上下が反転するので付箋も二方向になる]

SDGs の18番めの目標と本書の内容とは、本質的なところで関係している。本書は人類の過去・現在・未来について述べており、その観点から、18番めの目標はよく分る。〈信じるか信じないかはあなた次第です!!〉という、まさに都市伝説なのだが、かなり説得力がある。

もうひとつ例を挙げると、トルコのギョベクリ・テペ遺跡 (Göbekli Tepe) がある。この遺跡を考慮にいれて世界史を見直すと、世界の像が違って見えてくる。

ギョベクリ・テペについては本はいろいろ出ており、2冊ほど手に入れて読んでみたが、読めば読むほど興味深い。

年代についてはこれから発掘が進むにつれてもっと判ってくるだろうが、控えめに言っても人類最古の遺跡であることはまちがいなさそうだ (本書では今から1万1500年前の遺跡としている)。これまで最古の文明といわれていたメソポタミア文明より4000年も古い文明が存在した証拠が出てきたことになる。

世界遺産 に登録されている (下)。

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本書での興味深い論点は、今までの常識を覆す点の指摘だ。これまでは都市が発生してから宗教が生まれるとされていたが、ここではまず宗教が生まれてから都市が誕生したといわれる。定説が覆ったわけだ。都市に先行する神 (あるいは神々) とは何か。それを問題にしている。

ギョベクリ・テペはアナトリア半島南東部に位置する (下)。

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アナトリアといえば、本書で言語起源説のひとつ「アナトリア起源説」が取上げられている。

BC4000年ロシア南部を発祥の地とするインド=ヨーロッパ語族の仮説 (1950年代に支持された) と比べると、BC7000年のアナトリアをインド=ヨーロッパ祖語の発祥の地とするアナトリア起源説は1980年代に提唱されたが、ギョベクリ・テペの発見で現在では有力視されているという。

この説によれば言語の発祥が従来の説より3000年さかのぼることになる。

シュメール以前にアナトリア半島では、クババという存在が語られており、それが後のシュメールにも伝わっていたと本書は述べる。このクババという存在は一般には「シュメールの女王」とされるが、本書によればクババの語源は古代アナトリア中部 (現在のトルコ、フリュギア地方) にさかのぼるという。

本書ではクババが最大のテーマのひとつで、その系譜にもとづく壮大な補助線が提示される。それはマイクロソフトが米国防総省ペンタゴンと結んだ契約において展開するクラウド事業 Azureにまでつながる。

という具合に、古代から現代までが関流の都市伝説のヴィジョンでつながる大変スリリングな書。

[追記 20200122]

ギョベクリ・テペについて引続きしらべているうちに、同時期の (あるいは、一説には千年古い) ミニ・ギョベクリ・テペともいうべき遺跡がつい最近トルコで見つかったことが分った (2017年8月18日頃のトルコの Daily Sabah 紙に報道されたらしい)。

トルコの南東部マルディン (Mardin) 県のボンジュクル・タルラ遺跡 (Boncuklu Tarla) という遺跡で、2019年11月現在でまだ遺跡の底に発掘が達していないという。 関連する記事に次のものがある。

10,000 years of history to be uncovered in Mardin
11,300 Year-Old Mini Göbekli Tepe Unearthed In Turkey
Turkish Archaeologists Find Site Much Older Than Göbekli Tepe

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 [Boncuklu Tarla, Mardin; source]

#関暁夫 #都市伝説 #SDGs #ギョベクリテペ #クババ

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