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腎臓の病気 腎硬化症

どんな病気か

腎硬化症、今まで書いてきた文章の中でも時々出てきてはいたのですが、それにしても聞き慣れない名前ですね。その名前の通り腎臓の、ただし血管が、硬くなる病気です。もう少しキチンと書きます。

高血圧の状態が長く続くと、動脈硬化を起こして血管、特に動脈が硬くなってしなやかさが失われていくということは、以前にも書いてきました。大きな血管で動脈硬化が進むことは大変ですが、末梢の細い動脈で起きても、やっぱり大変なことになってきます。そして、それが腎臓での血管で起きて糸球体への血流が減少し、血液から老廃物をこし出す機能がうまく果たせなくなった結果、腎不全に陥った状態を指します。

血管にしなやかさがあるから圧力(血圧)を受け流すことができるのですが、血管が硬くなるとこれが難しくなってきます。そして、高血圧状態によって強い圧力(血圧)がかかり続けると、血管の方もこれに対抗しないと破れてしまうかもしれません。そうならないように血圧を受ける内皮細胞が増殖して対応することになるのですが、そうなると内側が増殖するので、内腔が次第に狭くなってしまいます。そのために血流が少なくなって、糸球体での老廃物をこし出す機能が悪くなってくるのです。

腎臓の細い血管で動脈硬化を起こすということは、全身のいたる所で動脈硬化を起こしている可能性が高いはずです。これは、動脈硬化が引き起こす様々な病気を発症するリスクが高いということを意味していることになりますね。具体的な病気を挙げると、心筋梗塞や脳梗塞といったところでしょうか。高齢者に多いとされてきましたが、最近ではもっと下の若い世代、バリバリ働いて欲しい人たちにも広がりつつあるとのことです。

どうやって見つけるか

「これだ!」というようなハッキリとした特有の症状があればよいのですが、何しろベースが高血圧状態ですから、特に自覚症状などはありません。自分でも分からないくらいですから、周囲の人だって気がつかないでしょう。

また、血圧が高いということで、これを下げるような治療を受けている人は多いでしょう。医療機関を受診した時にも検尿を行なったりはすると思いますが、尿タンパクが出ていない事も多いうえ、血尿になるわけでもありません。それだけ見逃しやすくなってしまうのですが、検尿と一緒に血液検査を行った時に、腎機能が低下していることで見つかることが多いようです。

とは言っても、この項の最初に書いた通り、これだというような特有の症状があるわけではないので、腎機能低下と高血圧に加えて、更にいくつかの検査をしておく必要があります。そのうえで診断をつけてもらうのですが、確実に診断してもらうための検査となると、腎臓の組織のごく一部を顕微鏡で見て判断することになるでしょう。腎生検と呼ばれる方法で、具体的なことは書きませんが、ご本人にも負担のある検査方法かと思います。ただ患者さんによってはこれをしない方が良いかもしれないようです。それは、高齢者が多いと先に書いた通りの理由です。

腎硬化症にも良性とか悪性とかがあるようです。良性の場合は、とにかく高血圧状態のコントっロールになります。腎硬化症も高血圧が原因で引き起こされたものですから、元の高血圧をコントロールすることが大切になってきます。ところが悪性の場合はというと、高血圧による病変が急速に悪くなることに加えて、腎臓以外にもあちこちに出てきている状態ですから、そちらが悪化しないようにすることも大事になってきます。

腎硬化症は進行していくと慢性腎不全になる可能性が出てきます。そして尿毒症などを起こすことになり、腎機能が正常時の10パーセントくらいまで低下してしまうと今度は人工透析の導入を考えなければなりません。何回か前の回で人工透析の事を少し書きましたが、こんな内容でした。

「2019年の時点で人工透析を導入している患者さんは、全国で33万人あまりいました。その内訳ですが、導入する理由として最も多かったものが、糖尿病性腎症で全体の39パーセントほど、次いで慢性糸球体腎炎の26パーセント弱、第3位が腎硬化症で11.4パーセントとなっていました。」 

このように、腎硬化症は人工透析導入の理由の3位に挙がっていますので、油断はできません。腎硬化症も始めのうちは症状もなく、早めに手を打って、悪化しないようにしましょう。

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