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39、メラニン細胞刺激ホルモンの話

今回はちょっとマニアックなお話になるかもしれません。メラニン細胞(またはメラノサイト)刺激ホルモン(以下MSHと略)は脳下垂体の中葉という場所から分泌されます。前葉と後葉はよく知られていますので、それぞれ分泌されるホルモンについても詳しく研究がされていろいろな事が分かっていますが、中葉って(?)という人が多いかもしれません。

人間の場合、下垂体の前葉と中葉の間の区切り板のようにとても薄くなっています。退化してしまっているとされているようでした。だからでしょうか、前葉の様に華々しく取りあげられることもなく、どちらかというと忘れられているかのような扱いです。ただ両生類や魚類では中葉は発達しているらしく、結構しっかりと扱われているようでした。

下垂体に関する記事を調べてみても解剖学に関わるものを調べてみても、下垂体中葉について書かれている記事は多くありません。試しにウィキペディアで調べてみたところ、下垂体中葉の部分はまだ何も書かれていませんでした。

そんな場所から分泌されるホルモンですから、何か書こうと思ったら調べる前に探すことから始めないといけなかったのですが、いろいろと面白いことが分かってきました。

メラニン細胞に対して働きかけるということですから、日焼けに関係するんじゃない(?)と思ったりしそうですよね。あながち間違いでもないようですが。

メラニンのメラノとは黒いという意味だそうです。メラニン細胞とは黒い色素を含んだ細胞という意味になりますが、MSHはこの細胞を刺激して増殖させたりメラニン細胞を大きくさせたりするという働きがあるんですね。ということは、体の色を変化させる、あるいは変化させることが出来るということを意味します。人間なら皮膚の色が変わると言えば日焼けくらいでしょうか。たしかに、両生類や魚類にとっては体色の変化は死活問題につながりますから、出来るに越したことはありません。

メラニン細胞は満遍なく全身に分布しているわけではありません。光にさらされる場所に多く分布しているということで、顔のあたりが一番多いかもしれません、日本人なら髪の毛もそうでしょうか。光の中でもメラニンの話題で見ると紫外線が対象のようです。だから、化粧品関連の分野が熱心なんですね。

このホルモンはメラノトロピンという名前もあるそうです。統一してもらった方がよいですね、いろいろと同義語があると非常に分かりづらいです。

話が逸れたので戻します。MSHの働きですが、MSHは名前からして指示をする役割があるわけですから、メラニン細胞を刺激するということはメラニン細胞を活性化させるということを意味していると考えられませんか。MSHを分泌する場所にトラブルがあると、MSHもおかしなことになってしまわないかという懸念が生じます。

MSHはACTHと構造的には同じグループだそうですから、分泌される場所が違っていても何らかの影響を及ぼし合っているかもしれません。実際にクッシング症候群という病気はACTHの過剰分泌によって引き起こされるものですが、時に過剰な色素沈着を引き起こすことが知られています。

またアジソン病という副腎の慢性的な機能不全の病気がありますが、これは副腎自体の問題でなければACTHの分泌不全によるものだそうです。この病気になると多くの症例で、皮膚のいろいろな所に色素の沈着が見られます。その場所も、必ずしも紫外線の影響とは限らないということですから、MSHとACTHの間で何か影響し合っているのかもしれませんね。

あともう一つ、妊娠中にもMSHは増加するのだそうです。そして妊婦の方も色素沈着を起こすことがあるのだとか。妊娠中に増加するホルモンと言えばエストロゲンもその一つですが、これを分泌させるのは下垂体前葉から分泌されるFSHやLHといった、性腺刺激ホルモンです(前回出て来たものです)。これも何か絡みがあるのでしょうか。

人間の体って、いろいろと複雑ですね。


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