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肝性脳症の話

肝臓と脳の関係

肝性脳症とは、肝臓が正常な状態であれば解毒作用が働いて無毒化するであろう有害物質が、代謝されることなく血中をめぐり、脳に影響を及ぼしてしまうことで引き起こされる合併症です。肝臓では様々な有害物質が代謝されて分解、無毒化されていきますよね。この場合はアンモニアなどがこの有毒物質にあたります。

アンモニア自体は肝臓の機能が正常であろうとなかろうと、タンパク質の代謝によって出来てきます。ただ、有害であるために肝臓で処理されて尿素になるのですが、これによって無毒化され、水に溶けやすくなることで、腎臓でろ過されて体外に出されるという流れで代謝されます。

肝機能が低下すると、量にもよりますがアンモニアが十分処理できず、血液中を流れて脳で悪さをしてしまいます。何をするかというと、中枢神経系に働きかけて、意識障害を引き起こすといったことをします。

そして、肝機能の低下の度合いによって、アンモニアの処理の度合いが変わってきます。アンモニア自体の量にもよりますので、必ずしも脳に影響を与えるとは限りません。その度合いによって、症状が出なかったりすることもありますのが、アンモニアが毒性の強い物質であることには変わりません。

原因と症状

全く自覚がない軽い程度や、判断力が鈍ってトンチンカンになるような状態から、意識障害や昏睡に至るまで、大きく五段階に分けられています。昏睡度と呼ばれているもので、以下のような状態を指します。

 Ⅰ 周囲に無関心、昼夜が逆転する、過度の幸福感を感じる
 Ⅱ 見当識障害、羽ばたき振戦、異常行動を取る場合がある
 Ⅲ 興奮状態や意識混濁、傾眠状態、外的刺激には反応して目を覚ます
 Ⅳ 昏睡状態になるが、痛みには反応する
 Ⅴ 昏睡状態で、何をしても反応しない
  (一般的な状態なので、このような症状がない場合もある)

大きな影響を及ぼす物質は、アンモニア以外にも存在します。肝機能が低下することでアミノ酸バランスが崩れてきたりするのです。これは食事として摂取する内容は変わらなくても、肝機能低下によりタンパク質の合成が上手く出来なくなり、その結果血液中のアミノ酸バランスが崩れてしまい、これが脳にも影響を与えるとされています。

治療として行われる事

治療を始めるには、まず診断が必要ですね。肝機能低下があっての肝性脳症ですから、まず血液検査などで肝臓の状態を調べます。ただ、症状と機能低下の状態とは相関するわけではありません。また、血液中のアミノ酸の量やバランスを調べたりもします。フィッシャー比と呼ばれる、アミノ酸を構造上の違いから2つのタイプに分けて、その比を見る検査方法が用いられます。また、脳に影響が出ているわけですから、脳波検査を行なうこともあります。

そのうえで治療が行われるわけですが、とにかくアンモニアを産生させないことが重要です。そのためには、食事の内容を見直してタンパク質の摂取を制限したり、下剤を使って腸の中を洗浄して腸内でのアンモニア産生を抑えたりします。


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