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17、鉄の話

今回は「鉄(Fe)」と取り上げます。もちろん、栄養素としての意味での鉄ですよ。釘とか製鉄とか、そっちではありません。

鉄といえば鉄欠乏性貧血といった病名があったりしますので、ある程度ご存じの方が多いと思います。この事から分かるように、鉄もまた身体にとっては必要なミネラルの一つです。先に挙げた鉄欠乏性貧血も、赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質に必要なものなんですね。それによって呼吸で取り入れた酸素を全身に運んで代謝に使うという重要な働きがあります。

他にも、筋肉にはミオグロビンというたんぱく質があって、ここにも鉄が含まれています。肝臓や骨髄等の場所にも鉄は貯蔵されているんです。赤血球のヘモグロビンや筋肉のミオグロビンは鉄として機能していますのでこれを「機能鉄」と呼び、肝臓やその他の場所にも鉄が含まれる場所の場合は倉庫に保管したような状態でストックされているので「貯蔵鉄」という名前が付けられています。

割合としては機能鉄が全体の7割ほどで、残りの3割ほどが貯蔵鉄になります。それじゃ全体でどれくらいあるのかという事になるのですが、資料によって多少表記に違いがあるとはいえ、約3グラム(資料によっては3~4グラム)と書かれていました。

ミネラルに限らず、栄養素の問題は一般に過剰や不足でどんな不具合が起きるかという事になるのですが、鉄に限れば普段の食事をしている限り過剰摂取はあまり心配しなくてもよいようです。反対に、不足は生じるかもしれません。

鉄が不足するとヘモグロビンが減って赤血球の数も減りますので、酸素の供給に支障が出て来ます。この状態が鉄欠乏性貧血なのですが、酸素の供給に難があるのですから動悸や息切れにつながることは容易に想像が出来ますよね。他にも集中力が低下したり、頭痛や食欲不振などの症状が出てきたりします。また、筋肉中のミオグロビンも鉄不足で減ってきますので、筋力の低下や疲労感といった症状も起こってきます。

身体は鉄が不足しないように貯蔵鉄というストックを持っているわけですが、機能鉄が不足してくると貯蔵鉄を放出して不足の状態を改善するために補います。しかし、この貯蔵鉄すらも使い果たしてしまうとヘモグロビンがうまく作れません。その結果、酸素の供給に支障をきたすために酸欠状態が起こって、息切れ、動悸、めまい、疲労などの症状が出て来ます。これが鉄欠乏性貧血の正体です(先ほどはこの過程を全部省略して結論だけ書きました)。

反対に過剰摂取が問題になるとすれば、不足気味の状態(だと本人が思って、その状態)を補うためにサプリメント等で鉄分を摂取する場合が該当します。鉄はもともと吸収されにくいという性質があります。それに加えて、(鉄は腸の粘膜から吸収されるのですが)貯蔵鉄の一種であるフェリチンが鉄の吸収を促進したり抑制したりと、その調節していることが分かっています。そのため必要以上に体の中に鉄が取り込まれたりしないような仕組みを持っているんです。そういった働きがあるので、通常の食事では鉄を摂り過ぎることが無いんですね。

それでもサプリメントで摂取する人にとっては、過剰だか不足しているのだか、自分でもなかなか分からないんじゃないでしょうか。じつはサプリメントなどを使って鉄を長期にわたって過剰に摂りつづけると、鉄沈着症を起こす恐れがあります。他にも、便秘や胃の不快感といった副作用が出て来るという報告もあります。幼児の場合では急性中毒を起こすかもしれません。

やはり、過ぎたるは~という事ですね。


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