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虚血性心疾患の危険性の話

虚血性心疾患は、最悪の場合は命を左右することもありうる心臓の疾患ですから、誰にとっても避けたいと思うことでしょう。これまで、どのような疾患かといった話を書いてきましたが、今回はその危険性についてを取り上げます。

統計による死亡順位

厚生労働省が毎年発表している人口動態に関するデータがあります。ご存じの方も多いと思いますが、日本人全体について、出生が何人、死亡が何人、婚姻が何組といった話題をまとめたものです。その中の死亡についてのところでは、どのようにして亡くなられたかの死因別統計の結果が記載されています。

死亡については病名とそれによる死亡者の総数、それを性別や年齢別にまとめたものですが、よく報道されている「日本人の死因では、がんが一位になった」といった話題は、多くの場合こういった資料を引用しています。

令和2年(2020年)のデータでは、日本人の死因別統計によると、高血圧を除く心疾患は第2位になっていました。高血圧を除くといっても、全てが心筋梗塞や狭心症などによる虚血性心疾患というわけではありません。それにしても多いですね。すべてではないといっても、殆どが虚血性心疾患によるとされています。こんな感じのデータでした。

 第1位 悪性新生物(腫瘍)   27.6パーセント
 第2位 心疾患(高血圧を除く) 15.0パーセント
 第3位 老衰            9.6パーセント
 第4位 脳血管疾患            7.5パーセント
  (以下省略)
厚生労働省 令和2年(2020年)人口動態統計月報年計(概数)の概況 図5より

いずれにしても、多いと感じるような数字ですね。割合は多少変わるにせよ、男女とも死亡の原因としては第2位となっていました。

死亡率

人口10万人対としてのデータが発表されていますが、それによると死亡率は、心疾患の場合は傾向として増え続けています。脳血管疾患が減り続けている傾向があるのと対照的です。かつては脳血管疾患の方が死亡順位は高かったのですが、昭和60年あたりで心疾患と逆転して、死亡率は心疾患より低くなりました。ちなみに、悪性新生物(腫瘍)というのはいわゆる「がん」のことですが、こちらは一直線に増加傾向が出ています。

「死亡」ということに注目して考えると、疾患としての重症度の問題以外に、治療開始までの所要時間という因子が浮かび上がってきます。特に急性の心筋梗塞といった疾患では、如何にして治療開始までの時間を縮めるかという点はとても重要です。早ければ早いほど良いと言えますが、実際には直ちにというわけにはいきません。発症した時の状況や周囲の人の協力や理解、搬送にかかる時間なども大きく関わってきます。

一般には、出来るだけ早く梗塞部位の治療に取り掛かって、90分以内に再度血流を確保.することが出来れば理想とされているとのことです。

あるデータでは、急性の心筋梗塞を発症した患者さんのうち、病院への搬送途中に死亡してしまう例があるとのことですが、それが実に13パーセントにも及ぶのだとか。しかも、発症してから30日以内(多くはまだ入院中となります)での死亡率は6~7パーセントとなっているそうです。そうなると、もし既往歴として虚血性心疾患がある場合は、なんとしてでも心筋梗塞を起こさないように、注意しなければなりません。

もし発症してしまったとしたら、周囲に人がいる場合であれば、如何にして救急車を呼ぶかといったことも、予後を左右することになります。ある程度の年齢になれば、誰もが自分や周囲の人が発症しうるであろう疾患についての知識も、あった方が良いことになりますね。


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