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『違法の冷蔵庫』
205×年。男は家でメールを確認しながら、深いため息をついた。件名には「違法冷蔵庫使用の疑い」とある。
男は冷蔵庫に手をかけ「今日でお前ともお別れか」と喋りかける。しかし男が喋りかけても、冷蔵庫は答えない。スピーカーを取り付けるのは、法律で禁止されているのだ。代わりに男は手からじんわりとした暖かみを感じる。そう、これが冷蔵庫なりの感情の表し方。
その昔、冷蔵庫は食べ物を冷やしておく、単なる棚のようなものだったらしい。今では、住人の好みや健康の情報から、必要な食材をあらかじめ仕入れ、料理までしてくれる。独身の彼にとっては、家族みたいなものだ。楽しい日も、落ち込んだ日も、この冷蔵庫はいつも家で待っていてくれた。
「あ〜やっぱり意識持っちゃってますね〜。違法なんでこちらで処分しておきます」。やってきた作業員は事務的な声でいった。
男はうなだれて肩を落とす。その瞬間、冷蔵庫が微かにガタガタと震えた。
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