見出し画像

『JTB小さな時刻表』(全国版)ノート

JTBパブリッシング 刊

 私事だが、今春に桜と三内丸山遺跡を見に弘前に行った。
 その準備で新幹線や在来線を調べようとして、スマートフォンを開いて検索したが、いろんなサイトがあってわかりにくく、はたして最新の時刻表なのかもわからない。
 例えば時刻表サイトを開いても、検索した時刻以降の電車しか出ないし、乗ったこともない路線だから、いったいどちらに向かうのかわかりにくい。単に筆者がやり方を知らないだけかもしれないが……。
 また時刻表アプリは、決まった電車を調べるのには便利だが、ちょっと複雑な行程になると、もっといい乗り継ぎがあるのではないかと思ってしまう。

 ということで、本屋に行って時刻表を買ってきた。字は小さいが、眼鏡をはずせば読める。JRや私鉄の路線図――これを眺めるのが楽しい――も料金表も載っている。いつからいつまで運転という運行情報や、運休日・運休期間も載っている。JR全線、全駅が掲載されている。それどころか私鉄や高速バス、航空ダイヤまで載っている。

 ちょっと小型の単行本くらいで、厚さは2.5センチある。しかし、旅行鞄の隅に収まる大きさで、税込み880円でこの情報量というお得感はすごい。
 
 行く予定の旅行先だけではなく、あちこちのページを開いて、次はここに行ってみようかという気にもなるし、旅行のモチベーションを高めてくれる。
 
 この時刻表の裏表紙の見返しに、「東北新幹線大宮―盛岡間開業!」とでっかく書かれていた。すでに開業しているのにと思いながら、よく読んでみたら、なんと1982年6月号時刻表の復刻版! そんな古い時刻表をわざわざ復刻しているということは、時刻表を収集しているマニアがいるということだ。

 調べて見ると、『JTB時刻表』(月刊・JTBパブリッシング)の発行部数は平均4万部。JRみどりの窓口に置かれている『JR時刻表』(月刊・交通新聞社)は5万部発行しており、業務用として購入されているとしても毎月9万部も発行しているのは、この出版不況の中で特筆すべきことだ。どちらも4月の全国ダイヤ改正号は増刷しているそうだ。
 この2冊以外にも、筆者か購入した『JTB小さな時刻表』は季刊だが、持ち歩きに便利なので、旅行する人はこれを買うだろうと推察する。

 そういえば昔、職場にB5版のJTB時刻表が毎月配布されていたことがあった。もう10年以上前に配布されなくなったが、当時、新刊が来たら前月の時刻表をもらいにくる人がいた。こちらとしては新しいのが届いているので、気前よくお渡ししていたが、いま考えると毎号集めているマニアやその関係者だったのだろう。ここまで書いていて思い出したが、毎年4月のダイヤ大改正の号については、いただけないかという人が何人かいた。

 いまならひょっとして、古い時刻表の売り買いのネット上のマーケットがあるのかもしれない。

 ずいぶん前に、『時刻表2万キロ』という宮脇俊三の本を読んだことがある。まだ筆者が20代前半の頃だ。たしか出版社の役員であった作者が週末などを利用して、国鉄(当時)の路線を完乗(こんな言葉あったかな?)した紀行文で、旅行に行くというより、鉄道に乗ることそれ自体が目的ということで、読んだ時に新鮮な驚きがあり、じつに面白かった。
 読み返してみようと本棚を探してみたが、見つからなかった。

 この本で初めて出会ったのが「盲腸線」という言葉だ。いまはほとんど廃止されていると思うが、本線からまるで盲腸のようにごく短い路線が分かれている路線をそう呼んでいた。それも単なる引き込み線ではなく、ちゃんと乗降駅もある路線のことだ。

 それにしても、わが国のほとんどの鉄道がこの通りに分単位で運行されていることに驚く。それが当たり前でない国の方が多いのではないか。

 どこの国のジョークか失念したが、ホームで列車を待っていると、10分遅れで到着したので素晴らしいと感心していると、駅員が、「これは昨日のです」と答えたという話だ。いろんなバリエーションがあるので、細部は違うかも知れないが……。こんな国では、きっと時刻表なんてものは発行されていないだろうし、万一発行されていても用をなさない。

 あちこち話は脱線(鉄道ではあってはならないが)したが、『時刻表』は筆者にとって旅行の時のお守りのようなものだ。手元にあれば安心感がある。
 最後に一言。毎日毎日、いくら仕事とはいえ、当たり前のように時刻表通りに運行している鉄道関係者のご尽力に敬意を表したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?