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『ブック・イン・ピンク』ノート

山崎まどか著
晶文社刊

 書名を見て何の本かと思われる方がきっとおられると思うが、これは古本ガイドである。副題に「おしゃれ古本ガイド」とある。
 カバーの見返しに、「誰もが絶賛する名作より、自分の心に響く一冊を探し求めるのが乙女道。その道しるべとなる本と、今後読みつがれるであろう定番を紹介する、古本セレクトショップです(男子も歓迎)」とあるので正直ほっとした。

 著者がこの本を書くきっかけになったことが「まえがき」にある。
 著者の仕事部屋には本棚がひとつしかない。「本棚というのはあれば埋まってしまうもの」という戸板康二先生が書いているように、新しい本を入れるスペースはもうない。一冊入れようとすると、一冊抜かなければならないので、抜いた本は古本屋に売ってしまうという。
 それを繰り返すうちに、自分の本棚にひとつの傾向が見えてきたそうだ。売る本は本屋にいけば手に入る新刊本や、図書館で借りられる名作などであり、逆に本棚に残るのは、偶然見つけた古本、次にいつ出会えるかわからない本など、古本ばかりが残るようになったという。
 だからこの本は、著者の本棚紹介であり、それすなわち古本ガイドになるということだ。
 そして、「究極的にいえば本はモノではなく、それを読んで過ごした時間なのですから」と書いている。
 最初この言葉を目にしたとき、「しゃれたこと言っちゃって」と思ったが、よくよく考えてみるとなかなか味わい深い。筆者の仕事部屋ほか廊下や和室や寝室のスペースまで侵食した本の背表紙を眺めていると、これまでの人生の時間が確かに実感できるのだ。

 この本は5つの章に分かれていて、第1章が〈ブック・イン・ピンク〉で以下、〈ブック・イン・レッド〉〈ブック・イン・ブルー〉〈ブック・イン・ブラウン〉〈ブック・イン・グレー〉となっている。
 さらにその各章が〔ブックシェルフ1〕からはじまり、章の最後は[ブックエンド]となっており、目次の作りからも著者や編集者のこだわりが見える。

 またそのブックシェルフに「おいしい話に目がない人の本棚」「乙女のための本棚」「ボーイフレンドの本棚」「観賞用本棚」など分かりやすいタイトルがあると思えば、「パジャマ・パーティみたいな本棚」とか「ポップコーン・ラヴァーのための本棚」とか、どういう本が紹介されているのかよくわからないような本棚もある。

 いま全ページをめくって数えたら(我ながら物好き)本が234冊と、あと「読書のためのレコードライブラリー」にレコードが36枚紹介されている。
 234冊の内、筆書が読んだことがある本はたったの13冊。『ティファニーで朝食を』(トルーマン・カポーティ)、『装丁物語』(和田誠)、『製本工房から』と『モロッコ皮の本』(ともに栃折久美子)、『春にして君を離れ』(アガサ:クリスティ)などである。ほんとに本の世界は広すぎる。

 このようなブックガイドは、本との出会いを求め、読みたい本を探すためのものだろうが、読み物としても面白い。
 本屋で、『○○が勧める100冊』などという書籍や雑誌の特集号などを見つけると筆者は必ず手に取ってパラパラとめくってみる。

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