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才能に焦点を当てたクリエイター群像劇『原作版 左ききのエレン』

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掲載作品の中でも特におすすめの作品を紹介してまいります。今回は少年ジャンプ+でのリメイクでも話題の『原作版 左ききのエレン』(著者:かっぴー)をご紹介します。

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「天才になれなかった全ての人へ」。冒頭に掲げられたこのキャッチコピーが先制パンチのように胸に刺さる。しかもこの言葉は各巻の冒頭に、繰り返し掲げられるのだが……読み進めるうちにそのつど違った感慨をもたらすことになる、と言っておこうか。

ドラマ化でも話題となった本作は、生まれながらの天才アーティスト・山岸エレンと、天才に憧れる広告デザイナー・朝倉光一の物語だ。
同い年の2人の出会いは高校時代。エレンは幼い頃から才能を認められていたが、売れない画家だった父が才能もないのに芸術に憑かれ、不遇のまま死んだことから絵をやめていた。しかし、そんなエレンが再び絵を描き始めるきっかけを作るのは、光一のどうしようもなく下手くそなデッサン画なのだ。

それにしても、光一の《凡人》ぶりの描写は容赦無い。光一ときたら「カッコいいじゃん?」程度の認識でグラフィックデザイナーを目指し、「広告代理店に入って将来はアイドルと結婚する」と野望を語り……胸がかきむしられるほどに痛々しいけど、若者ってたいがいこんなものだ。光一がエレンに才能の無さを指摘されたときの「何かにならなきゃ……退屈で生きていけねぇよ……!」というセリフも身につまされてしょうがない。

これが普通の物語ならば「エレンだけは凡人とされる光一の資質を見抜いており、やがて光一は秘めたる才能を開花させ、数年後2人は大舞台で対決!」となりそうだが、そうは問屋がおろさない‼︎

光一は美大卒業後、一流クリエイターとしてもてはやされる未来を思い描いて大手広告代理店に就職。情熱的に仕事に取り組むも、なかなか芽が出ずにもがき苦しむ。華やかに見えて競争の激しい広告業界は、社内外を問わず海千山千の怪物だらけだ。憧れの上司の実力とステイタスはほど遠く、ときに理不尽な上下関係に振り回されて辛酸を舐め、時間と予算の壁をにらみながらクオリティのハードルに挑む。

《未知の閃き》がものを言うアーティスト業界、センスをビジネスと結び合わせて結果を出すクリエイター業界にまたがる本作は、立場も価値観も多様な人々が織りなす群像劇。ギリギリのせめぎ合いの中で生きる登場人物たちから、思わずメモしておきたくなる名言が次々に飛び出す。
「クソみたいな日にいいもん作るのがプロだ」
「才能とは集中力の質」
「感性と共に必要な性質/それはーー未来を見据え/緻密に考え大胆に行動できる性質…知性だ」
 こうした言葉に触発され、励まされ、奮起する。それでも光一が「やった!」と充実感に浸ることができるのは一瞬で、難題は次々に降りかかるのだが。
 
一方のエレンは、彼女を的確にプロデュースしてくれる味方を得てNYにわたり、アートの世界で注目を集めていく。光一とエレンのステージはまったく異なる。2人にとってお互いは心の中で重要な位置を占めているが、連絡を取り合う友でもなければライバルでもない。
だが、運命の力に引き寄せられてか、2人はときおり奇跡的な邂逅を果たす。あるとき仕事の現場から逃げ出した光一にたまたま遭遇したエレンが放った言葉がこれだ。
「信じるっていうのは…!!! いつか夢が叶う事じゃない!!! いつか脚光をあびる事じゃない!!!/いつか思い出して誇れる事を信じろ!!!/たとえお前が何かになれなくても/何でも無いお前を誇れよ!!!」

天才と呼ばれるエレンにしても、迷いなく栄光の道を歩み続けているわけではない。
「この苦しみが…そのものが表現」「誰のものでもない/この苦しさは私のものだ」という彼女のモノローグこそ真理。生きている限り、苦しみはついて回る。一生懸命やること、考えることをやめてしまえば絶望することはなくなるだろう。だけど、それで本当に納得できるのか?
 
「戦う事は勝つ事よりも難しい」とは光一の言葉だが、戦うってホントに勇気がいる。でも、自分の人生を生きたいなら、戦いの場から降りちゃダメなんだ。

この作品を1年後、5年後に読み返したらきっとまた違った想いを抱くのだろう。どのキャラクターに思い入れるかも変わってきそうだし、前には引っかからなかったポイントにハッとするかもしれない。
そのときを楽しみに……あなたが何歳であろうとも、これは《今》読んでおくべき《大人のための青春マンガ》なのである。

書き手:粟生こずえ

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