ハーレム系ラブコメマンガの金字塔『ラブひな』

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掲載作品の中でも特におすすめの作品を紹介してまいります。今回は一世を風靡した大人気ラブコメマンガ『ラブひな』（著者：赤松健）をご紹介します。

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まったく平凡で何の取り柄もない男子が、なぜか複数の美少女にモテまくる。いわゆる「ハーレム漫画」は今やラブコメの王道。『いちご100%』『ToLOVEる』『ニセコイ』、そして最新のヒット作では『五等分の花嫁』などハーレム漫画の名作は数多い。

その元祖といわれるのが、1998年から2001年にかけて連載された『ラブひな』なのである。もちろん本作以前にも、主人公が複数の女子に言い寄られるとか、美少女だらけの中に男が１人といったシチュエーションの作品はあった。

だけど、そんなつもりじゃないのに裸を見ちゃったりする「ラッキースケベ」を「お約束」という目線で展開してみせたり……『ときめきメモリアル』（1994年発売）などの恋愛シミュレーションゲーム的な要素を漫画に同期させたという意味で、『ラブひな』は漫画史的にも大きな意味を持つ作品なのだ！

本作の主人公、浦島景太郎は東大を目指して二浪中。実家を追い出されて上京し、祖母がオーナーの温泉旅館に転がりこむ……はずが、いつの間にか女子寮となっていた「ひなた荘」の管理人をやる羽目になってしまう。

現役の高３で、景太郎と同じく東大志望の“なる”こと、成瀬川なるをはじめ、あられもないカッコでうろつく口の悪いお姉さんから純真な女子中学生まで、個性豊かな住人たちにイジられボコられ振り回されまくる日々。だが、住人たちはなぜかそれぞれに景太郎を意識するように。
景太郎が東大を目指す理由は、幼い頃に「いっしょに東大に行って幸せになろうね」と話した名も知らぬ少女との約束を果たすため。景太郎は、その少女の正体は“なる”ではないかと思いはじめるが、彼女には他に好きな人がいるらしい⁉︎

ハイ、来ました。「女子寮の管理人」という夢設定！　ひなた荘には露天風呂の温泉なんかもあったりして、美少女が密集する入浴シーンも日常茶飯事。
景太郎が住んでいるのは“なる”の真下の部屋で、天井にはでっかい穴が開いてて……とくれば眼福な事故が多発する！　そのたびに“なる”の鉄拳パンチで空高くブッ飛ばされるのも、わかっちゃいるのに痛快だ。

本作はコメディとしても秀逸。ちょっといいムードになっても、たちまちの急発進でテンポのいいギャグの世界に引き戻される。ストーリー展開もめちゃくちゃ速く、気をぬくと振り落とされそう。このあたりは後発のハーレム漫画と異なる作者の持ち味だろう。

途中から登場する、やはり東大を目指す受験生である乙姫むつみの存在感もすごい。当初から景太郎に好意を示し、“なる”と火花を散らすかと思えば、全然散らさない（笑）。一言でいえば、図抜けた天然ボケ。そのリアクションは常にあさっての方向、味方も反応できないキラーパスを繰り出すプレーヤーのごとき立ち居振る舞いで、ストーリーをさらに混迷に導くのだ。

「景太郎は東大に合格できるのか？」「幼い頃に約束した少女とは？」という大きな軸を中心に据えながら、時は流れていく。景太郎と、愛すべきひなた荘の住人たちのドタバタ青春劇の終着点をぜひ見届けてほしい。

書き手：粟生こずえ

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