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お帰りノート

月並みな理由だけれど
子どもたちが小学校に上がり
少しだけ隙間時間ができた頃
家計の足しにと午後からコンビニでパートを始めた。

少し気がかりだったのが
当時小学一年生だった
天真爛漫、感受性豊かな
寂しがり屋の息子。
学校から帰宅した時に
「お帰り」と言ってくれるママがいない
と寂しそうだった。

17時になると
勤め先のコンビニに
大好きなママを心配して
キックボードに乗って迎えに来てくれた。
(森羅万象チョコ買ってもらう目的も含)

私が家にいる日は決まって
「ママがいてくれるの本当に幸せだー」
と笑って走り纏わりついてきた。
(が、その後すぐ遊びに出掛ける)

そんな彼を見てチクチク胸が痛んだ。
小1の子どもに鍵を持たせるという
なんだか妙な罪悪感もあった。
考えた。そして思いついた。

1枚のメモ用紙に
「お帰り!今日は学校どうだった?」
などとメッセージを書き残して
パートに出かけた。

仕事の前に書く。
殴り書き。でも必ず書く。
案の定、喜んで読んでくれた。

しかし事件は起こった。

息子を冷めた目で見てた
プチ反抗期の娘(当時小4)が
先に帰宅しメモを読み終えると
クシャクシャにして
それをゴミ箱に捨ててしまった。

私はもちろん何も知らず帰宅。
泣き叫んでいる息子。
あー厄介だな、また泣いてる。
繊細な彼の心に
誰が、どんな傷を付けたのか。
たかがパートでも仕事中は色々ある。
疲れた。
お洗濯物取り込んで
ご飯作らなきゃ。
でも聞かなきゃ。
愛おしい息子の泣き狂う姿。
他人から見たらめんどい図だろうけど
母だもの。愛してるんだもの。

どうしたの。何があったの。

リカが!リカが!
オレが読む前に捨てた!
ママの大切な手紙を!
ママが書いてくれた手紙を
クシャクシャにした!
あれがあるとママがいてくれるみたいでオレは安心するんだよー!

そっか。そうなのね。よしよし。
娘にも話を。
いつも皆から注目を浴びるひょうきんな愛に満ちた弟を
冷めた目で見ていた引っ込み思案な彼女。(当時と現在は異なる)

なぜ捨てたの?

だって読んだと思ったから。

ゆうちゃん帰って来てないの
分かるでしょう?

私にも弟がいる。だから分かる。
皆に可愛がられて愛嬌があって
要領が良くて。
皆をいつも笑顔にしてる弟の存在。
私だってもっとママと仲良くしたい。
ママに甘えたい。独り占めしたいのに…
あー弟ってウザい。
なんて
意地悪な気持ちがあるに違いない。

不貞腐れてる。その気持ち分かる。
けど息子の優しさと涙に
胸が痛む。

どうしたら良いのかな。
また考えた。
先輩ママに相談した。

「ノートにすれば良いんじゃない?
そうすれば、捨てないよね?」

あ!なるほど!!

仕事の前に書く。
殴り書き。でも必ず書く。
帰宅した時の顔を思い浮かべながら。
時には宿題をすぐやらない子どもたちにイライラしながら。
学校で嫌なこともあるかもしれないし
すぐに報告したいこともあるかもしれない。
ごめんねすぐ帰るから
少し待っててね。

子供たちからの返事は嬉しかった。

ほどなくして
お帰りノートの返事は少なくなり
帰宅して
私がいなくても大丈夫になった。

ママが大好きだったことは今は昔。
20歳になった未だ反抗期の息子くん。
最近、久しく口をきいてない。
夢だったのかあの頃のこと。

お笑い芸人を目指してるのに
家では久しく笑ってない。
私の前では特に。
時って残酷だ。
お帰りノートを読み直し再確認。
夢ではないよねあの時のこと。

今も
忘れられない泣き顔
忘れたくない思い出
忘れられない日常

いつか子どもたちと読み返したい
私の小さな願い
捨てられない『お帰りノート』 

#子育て
#未来に残したい風景

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