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「時代遅れの公募方法」が社会課題の解決を妨げている

最近、自治体の公募情報を拾い上げてnoteにアップしています。対象にしているのは、参加資格が比較的ゆるやかな「プロポーザル案件」です。案件の検索は調達情報検索サイトで入手し、詳細情報を各自治体のオリジナルページで確認しています。

さて、この作業をとおして気づいたのですが、自治体の公募情報には、ウェブ検索で簡単に見つかるものと、探しても探してもなかなか情報が見つからないもの、2種類あるようです。

公募情報の置き場所で、自治体の本気度が分かる

簡単に見つけられる場所に情報をアップしている自治体を見ると、より多くの事業者とつながりたい、より良い提案を期待している、という証のように感じて、とてもうれしくなります。もっと積極的な自治体では、自分のホームページのみならず、地域の福祉系ポータルサイトにも公募情報をアップするなど、関心のある人々にむけた情報のアウトリーチに熱心です。

反対に、探しても情報が見つからない自治体の場合は、とてもとても分かりづらい場所に情報があります。独自の検索システムにアクセスし、難解な条件設定をクリアしないと目指す情報にたどり着けません。「その案件」が「このタイミング」で「このシステム経由で」公表されることを知っている人でなければ見つけられないのです。

さながら「一見さんお断り」のように、敷居の高さを感じるのは私だけではないはず。「事前に相談をした事業者以外は提案しないでほしい」というメッセージかな、と勘繰ってしまいます。

このようなシステムを採用しているのは、東京都など人口も企業も集中しているエリア。おそらく、情報をオープンにすると応募が集まりすぎて事務局側が対応しきれなくなることから、提案数を絞るためにあえて入り口を狭めている可能性があるかもしれません。

誰のための公募なのか?

ただ、考えてみてください。プロポーザルは「自治体が考え付かないアイディアや独自ノウハウを呼び込むため」に行うものです。金額ではなく提案内容の良しあしで評価が決まります。つまり、自治体が思いもよらないアイディアやノウハウを持っている事業者にリーチしなければ、最良の提案を求めることはできません。

東京都にしても、すべての案件を分かりにくい場所に置いているわけではなく、希少種に出会うくらいの確率(?)ですが、プロポーザル情報をホームページ上に載せていることはあります。本当に幅広く提案をもとめたい場合には、ちゃんと誰でも目にすることができる場所に情報を置いているのです。

時々、非常に難易度の高い事業にもかかわらず、「公募の手続きに時間がかかるからプロポは難しい」「自治体内でプロポで公募した実績が少ないから入札にしたい」「応募者数を絞りたいからホームページ階層の深い場所で公募情報をアップする」などとおっしゃる担当者がいます。そうして、手続きの面倒くささから公募方法や公表方法を選んだ結果、有用なノウハウを持つ事業者が参画できず、担当職員が業務遂行に苦労したり、最悪の場合は事業を仕切りなおさなければならない事態も。

こういう方に出くわすと、一体何のために公募するのか、誰のための事業なのか、と詰め寄りたくなります(が、大人なのでぐっと我慢)

出会うことで社会課題の解決スピードを加速させる

私は、公民連携を生業としており、自治体の抱える課題に最適なソリューションを持つ事業者を探し出し、マッチングすることが仕事です。より多くの社会起業家を自治体につなげることで、社会課題の解決スピードを加速させたいと願っています。

最近、主にまちづくりの文脈で、「公募で選んだ事業者は紋切り型の対応しかできない。地域の志ある団体・企業を信頼して随契すべき」という論調を見かけますが、この趣旨にはあまり賛同していません。公募スキームの工夫次第で、創造性のある事業者が参画する可能性が十分あると思っているからです。

例えば、人口が少なく特筆すべき産業もない地方都市などでは、ユニークなビジネスを行う企業が積極的に参画するためのインセンティブが少なく、全国的に類似事業を手掛ける企業が選定される可能性が高いのは事実です。しかし、公募条件として、地域の志ある団体・企業との連携を求めたり評価することで、地元連合が大手企業を覆すケースもたくさん見てきました。もちろん、地元連合が力不足で負けてしまうこともありますが。

大切なのは、世の中により良いソリューションがあると信じて疑わないこと。それを探すために、自治体側が手間をいとわないことではないでしょうか。

公募情報の出し方や公募方法そのものが、時に最適な相手との出会いを妨げてしまうことがあります。例えば、前述の東京都ですが、ここの公募情報は本当にユニークで新しく、ぜひいろんな起業家に紹介したいところ。でも、今のままの公募では多くの人に情報を届けることができません。名古屋市の公募情報も検索システムが独特で、一発で見つけることができず非常に探しづらいことで有名です(システム改良中であることを願う)。

最近はマッチングサイトが花盛り。いかに簡単に、より多くの人とつながれるプラットフォームを作れるか、多くの企業がしのぎを削っています。

つながること自体が価値を生み出しうる時代。そして新しいソリューションが日進月歩で登場する世の中です。自治体の公募のあり方が変われば、今以上に社会起業家が自治体とつながりやすくなり、これまでにないスピードで社会課題が解決に向かっていくでしょう。

公募のあり方を変えると、世の中も変わる

この投稿をみた自治体の職員の方がいたら、ぜひ、皆さんの自治体の公募情報の発信のあり方や公募方法の決め方を振り返っていただきたいです。そしてもし「だめだこりゃ」と思ったら、頑張って庁内に働きかけてほしいです!

だれしも、豊かな人生を送るために、生涯の友達や人生の伴侶とめぐり合うために、自分の時間や労力をたくさん割いているはず。その情熱を「素晴らしい事業者と巡り合うこと」にも割いてみませんか?

その先に、あなたの自治体で暮らす市民の生活が良いものになり、そこで暮らすあなたやご家族、友人も幸せになるというハッピーストーリーが待ち受けているかもしれません。少なくとも、今より良い世の中が待っていると思います。


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