セクハラ、痴漢、冤罪話題に寄せて その2

セクハラ、痴漢、冤罪話題に寄せて その2


さて「痴漢冤罪」が、他の犯罪における冤罪とは、ネットで別格の反応を引き起こすということが大変よくわかった。
冤罪が起こりやすいと認識される満員電車を利用している男性にとって、非常に身近で自分の身に降りかかる可能性が高いからだろう。
そして恐怖故か、創作物の印象が強すぎる故か、痴漢自体の擁護をしたい人びとの格好の口実である故か、相当の男性がバグっている様子を見せる。
或いはちょっと見ていて何が彼をここまで駆り立てるの疑問が湧くほど感情的になる。
あのバグり方はほんのひと握りであると思いたいが、相当数を目にしてしまったために、私の認識以上に事態は深刻なのかもしれない。

(細かい事を言えば冤罪の用法が色々間違っている…よね?という人が散見されて、日本語的にも定義の曖昧さにもちょっと気を取られてしまうSNSの苦悩なのだった…。
冤罪されるってなんだよ…。冤罪かけられる…?おかしいだろ!!って突っ込む人が居ない………。
言葉は変化していくものだし、名詞を動詞風に扱うのは砕けた使用法として定着しつつあるとは思う。
思うが、こういう無意識で軽薄な誤用が広まっていくのはなんかイヤだし、使えるものと使えないもの、使い方というものがあるだろう。
日本語の文法的な事についてさほど詳しいわけでもなく、感覚に頼っているところが多いので、あやしい自覚があるところは調べるが、こういう事例が目に入り続けると、自分の感覚が狂ってくるのを感じるし、意識的だとしたら悪質なのでやめてほしい。

それと、嫌疑をかけられた段階で冤罪というのは、非常に広義の意味であり、そこで冤罪と使うには意味が重過ぎるし誤解誤認を招くのでやめた方がいいだろうと思う。
そしてわざと冤罪被害を印象付ける為に、このように使用している感じの発言も見られるので、注意が必要だ。身の潔白などという言い回しがあるので、無実を訴えるならこちらかそちらを採用していただきたい気分満載である。

《(痴漢)冤罪の定義は、狭義は「有罪になった方が実は無罪であったというケース」で、広義は「起訴されたけど実は間違いと分かったケース」で良い気がします。
女性から誤認で「この人痴漢です」と言われたり、警察の聴取は受けたけど誤認と分かり解放された場合は「誤認」「濡れ衣」で良いと思います》

という書き込みを見かけたが、本当にここはきっちり分けて表現にした方がいいだろうし、そうしたいと思う。
それから被害者側の誤認は虚偽申告ではないので、これも要確認である。)

実際の痴漢被害者側の人々がこの話題の文脈において、多少なりとも感情的になるのは仕方ないことだろうと思う。
だいたいが痴漢そのものとその被害状況やセカンドレイプの話を聴き続け、性犯罪における信じ難い判決などを聞き続け、抑圧に抑圧を強いられて、もうウンザリ、限界なのだ。
正直なところ長年積み重ねられた、個人を超えた怒りと悲しみの怨念に近くなっている気がする。

しかし実際には体験していない冤罪の恐怖と、痴漢撲滅を憎んでいるような煽りが噴出したため、かなりの人たちがこういう人々の心理分析を考えたりしている。
全員がそうだとは思わないが、痴漢冤罪という言葉自体にナイーブで異様な過剰反応を見せる男性たちが顕著だ。

通常の感覚からすれば、冤罪を防ぐにはどうすればいいか考え、捜査方法や法整備等に問題はないのかなどへ目が向くはずだ。
しかし多くの男性たちが、自分は被害者にはならないと思っている為だろうか、被害者側が黙れという論調になり、或いは被害者側の誤認を責め、被害者を装った詐欺恐喝犯の存在を持ち出し、意図的、或いは半ば無意識の誘導的に、痴漢被害を訴える「女性」に攻撃的である。

他の犯罪でここまで感情的に冤罪問題を声高に叫ぶ人はあまりいないだろう。

冤罪はどのような犯罪においても無くしていかなければならない。
その場合、元々の事件の被害者側の落ち度は普通問題にならない。
事件を調べ、刑罰を確定している側の問題である。
犯人と決めつけるようなメディアの報道の仕方が、大きな問題となったこともある。

虚偽を訴え、或いは共謀して証言をする事で利を得ようとする者は、痴漢被害を装った詐欺師であり、痴漢被害者とは別の存在である。

何故かこの詐欺恫喝犯の話が繰り返し登場し、被害者を侮辱する。
しかも殆どが虚偽とデマと創作物と、これまた信憑性の低い大変広義の冤罪の話で、実際の冤罪事件の事例は話題が沸騰していたSNSでは発見できず、ウィキで初めて見ることができた。

また有名な映画での冤罪事件は、痴漢被害者は実際に痴漢被害者であり、警察と司法への問題提起だったはずなのだが、さすがヘルジャパンと言われる性差別国と言うべきか、権力への疑問と抵抗を無意識にへし折る教育の賜物と言うべきか、犯人を取り違えたとされる女性の立場が主に反感を持たれバッシングされているようである。


あらゆる情報に言える事だが、先のウィキの記事も全てを鵜呑みにしていいものではないし、ウィキ側から疑問注釈や要出典注釈がされているものも多いので注意が必要だ。
が、こういう場合もあるんだなという詐欺恫喝事例だった。

詐欺師の男が女性を雇いそれを囮として、痴漢プレイ待ち合わせ募集サイトでカモを募るという、典型的な美人局(つつもたせ)、何という狡猾さ!
雇われた女性の自首により発覚したらしいが、この件は美人局被害者も訴え出る事が大変困難である事が予想され、非常に悪質な……いや、うん、悪質な犯罪である。
ここでこの被害者に対して、いやお前そりゃないだろとか、公共の場でやるなよ、という感想は、詐欺被害とはまた別に考えるのが理性的対応である。

よく事件の報道で、被害者がどれほど人格者だったか慕われていたかなどを殊更に強調し、必要以上にドラマティックないい話を作り上げようとする猿芝居がマスコミで見られるが、あれはものすごくよくないと思う。
被害者だろうが加害者だろうが、過去の手記やら何かを下手な演劇調、特殊なアニメ声で勝手に読み上げられる事例なんかも、もうどんな人権侵害だっつうのよ。

まあそれはそれとして。
被害者がもしも一般的な倫理規範に照らし合わせて問題ありだったとしても、自衛的な落ち度があったとしても、犯罪の被害は犯罪の被害として、加害者が裁かれることに差異があってはならないと思われる。

どうもこう、直接の被害とは無関係の、落ち度的なもので被疑者バッシングへ向かう意識の元凶のひとつが、マスメディアの感動ドラマ演出による安易な視聴者獲得構想な気がしてならない。
本来なら分けて考えるべきものが、無意識に強く関連づけられているような気がする。
マスメディアの報道と共に創作物のイメージが大変強固であることも感じる。
図像的視覚事例が創作物以外にほぼ体験出来ないもののイメージは、やはり創作物がベースになるのだろう。

この無意識の関連づけは、元々の社会規範などと絡まり、データや理論的解説では解けない事例が多く見られ、自分に都合のいい言説の方向づけとして強固に脳内採用される場合があるようだ。

痴漢に遭うのはこんなタイプ、というもののイメージも、長年なかなか払拭できていない様子である。
実際にはタイプも何もとりあえず自分より弱そうかどうか、その中で制服を着た女の子が最も多く、そして強いて選ぶならば声を上げなさそうな子というだけだろう。

声を上げなさそうな子、の中には男の子も入っている場合があるので、要注意である。特にペドフィリア(小児性愛者)は男の子の方が声をかけやすく、女の子より無防備で警戒心がない為に標的にされているようだ。
公共のトイレなどでの男児の性被害は多いようだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191225-00010002-bfj-soci

痴漢も依存性が高いようだが、ペドの性犯罪者は別格とされている。


さて痴漢冤罪であるが、近年では捜査技術が飛躍的に向上しているようである。
微物検査とDNA検査により、触ったか触らないか、故意に触ったのかどうか、撫でたのか揉んだのかまで判るそうだ。
この辺りの技術者らしき人物の解説が、動画からの静止画で紹介されていたのだが、ちらっと動画サイトを覗いた限りでは、元動画は見つけることができなかった。
フジテレビのLive news it! という番組で放送されたようだ。
北村弁護士がしくじり先生という番組で話した内容は動画でも見ることができる。

証拠として重要視されるので、痴漢の嫌疑をかけられた場合には、以後被害者には一切触れずに微物検査を申し入れるようにすべきと言われている。
どうも警察はこれを面倒がることが多いらしいので、無罪を主張するならばやってもらった方がいいだろうし、やってくれと言われたのに結局やらなかったとなると、警察側の不手際ということもできる。

この検査により、示談金目的の虚偽申告や、恐喝からも身を守ることができるようになったはずだが、先の事例のように本人が痴漢プレイだと思って触ってしまった場合には、色々と難しい事になるのかもしれない…。


下記は2年前の記事だが痴漢被害と痴漢冤罪について詳しい記事だ。
データと複数の意見が紹介されており、長いが読むなら全て読んだ方がいいだろう。

https://diamond.jp/articles/amp/136135?skin=amp

とりあえず近年では痴漢嫌疑で即長期間勾留にならないケースが多いようなので、不用意な逃走劇で高額賠償や命を失うようなことは避けた方がいいと思われる。

この記事にも事前に痴漢犯罪関係に強い弁護士を探しておくのも手であると書かれていたが、痴漢に関して弁護士検索をすると、痴漢被害者側向きの弁護士、冤罪被害者と加害者側向きの弁護士と分かれていたりするようだ。

保険まであるようで、それほど痴漢冤罪が現在発生しているのかは怪しいが、完全にないとは言えないので、入っておくのも安心なのかもしれない。
実際、痴漢も痴漢冤罪も立証が難しい事が多そうだし、どちらのダメージも大きい問題である。

冤罪被害と痴漢被害を天秤にかけて、どちらが重いという議論は的外れな上に不毛すぎる。

冤罪を恐れるあまりに痴漢被害を軽く見られた女性が感情的になり、混沌とした不毛な言い争いがそこここで勃発していた。
そりゃ逆上するわ…と痴漢被害に遭ったことのある側はまあ思うだろうなという感想である。
それくらい大したことないだろ、というのは典型的セカンドレイプなのだが、どのくらい意識的なのかは其々のレベルがありそうだ。


セクハラや痴漢被害、広くは性暴力被害にについて、そんなに大ごと?騒ぎすぎじゃない?という感覚があったとしたら、男女関係なくもう少しその犯罪の詳細について意識を向けてほしいと思う。

ネットに溢れるほんの一部だろうと思われる被害者の悲鳴と、何年も何十年も続く苦悶は想像を絶するものがあるだろう。
この被害と惨状を見て素直に驚くような、そういう感覚を持つ人間の基本を信じたい。

ただ、本当に、誰かが説明しても説明しても、何がそこまで問題なのか悪気なく本気でわからない、という人々も存在する様子を目にするので、手遅れ状態の重症者には、いつか天啓でもあってほしいと祈る以外ないのかもしれない。
相当な時間と根気が必要そうであり、そんな時間を割いてくれる親切な人はなかなか居ない。

感覚を育てるのは周りの環境、情報に起因するものが大部分を占める。
そこから、おかしいのでは?と疑問を持って更に感覚をアップデートしていくのは自分自身の知性と選択だ。

差別文化にどっぷり浸った意識状態なのではないか?
加害者側の意識状態に近くはないか?若しくは加害者意識の扇動に乗っかっていないか?
自分の性的搾取の楽しみや趣味嗜好を侵害されたような、否定されたような気分が混ざっていないか?
創作物や不確かなデマイメージに印象操作されていないか?
性的嗜好と加害欲や支配欲などを、性欲自体と混同していないか?
自分が信じたくない情報をブロックしていないか?


このような意識、感覚が、自分の中にどのくらいあって、どのくらいないのか、私自身を含めて瞬間瞬間内省が必要である。

下記のリンクのような数々の資料も法務省が公開しているようだが、一見して検索するのは困難だし、データを読むのにも技術がいると思うし、この膨大な量を纏めた分かりやすい一般の人々向け広報が、非常に不十分であるように感じる。

法務省 性犯罪に関する総合的研究 性犯罪の動向
http://www.moj.go.jp/content/001178520.pdf


セクハラや痴漢などの性被害、性的暴行まで行かないような性暴力について、様々な情報を知り、理解していくと、過去の出来事について、ああアレは性被害だったんだなとわかることが多々ある。
社会の性的搾取、性差別についてはそれ以上に理解が進まないとその存在と構造に気づくことができない。

痴漢冤罪話題に次に取りざたされていたのが、性的同意に関してだったが、これも何かあたふたと挙動不審になっている人々が妙ちきりんなことを言い出していた。
同意が取れないとかどんなコミュ障…と思ったが、過去から現在の自分の行いを正当化しようとする心理から、同意なんか取れるか的な事を言い出しているのだろうと言われており、なるほど説得力があるわ…と思わざるを得ない…。

本当に性教育どうにかマトモにしてほしいわと思うが、セクハラされた就活生を、国が企業に求めるハラスメント対策指針の保護対象から外すような認識の人々がトップを占めている限り、先進国標準へ向けた公的な決断は難しいだろう。

https://wezz-y.com/archives/32936


フランス人記者が見た伊藤詩織さん勝訴とこれからの戦い
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/post-13662.php

上の記事は、その1でも触れたものである。
《将来的には、国際的に性犯罪の共有定義を定めることが望ましい。》と最後に記されているが、日本国内の惨状を鑑みると、早急にそうしてほしいと思う。
以前よりは良くなっている筈だと思うし、地道な活動をされている方々の行動も身を結んでいる筈なのだが、まだまだ道は遠そうだなあと思ってしまうのだった。

しかし気落ちするような事象が続いているということは、改善したいという意識がそこへ向かっているからでもあり、私自身の意識も色々と激変しつつある。


性差別の話になると、何故か自分は関係ない、むしろ今まで享受してきた特権がなくなるかもしれなという不安定な気分になる男性が結構存在するようなのだ。
この辺は私も多くの男性側の抑圧について余りはっきりとした理解があったとは言えないが、結局は人権問題であり、個人の自由意志と尊厳を軽視する社会は誰にとっても居心地の良い社会ではない。
バリアフリー社会が健常者にとっても住みやすい社会である事と通じる。

男女格差が日本で埋まらない本当の理由
https://www.huffingtonpost.jp/amp/entry/danseinojoisoigaiminnakurushiinippon-100manbutoppa-furansunofeminizumushosetsugaegaku-danjokakusa-noriaru_jp_5df9be14e4b0969b618cec24/?__twitter_impression=true


※追記

加害者寄りの思考になってしまっているような人が散見されたので参考に。

こちらの記事では大学生の調査結果で女性と男性の性被害者のパーセンテージが先の資料よりも上がっている。

女子の78%、男子の12%、というのは実感に近いが、調査の仕方や暗数、などで上下してくるものではあるのだろう。


下記はツイッター内で見かけたアンケート結果だが、女性へのアンケート結果は前出の記事の結果とあまり変わらないが、男性へのアンケート結果ではかなりの開きがある。

回答数が雲泥の差ではあるが、男性への被害は思っていたより多い。


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