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詩 扉



詩 とびら


 そのとびら
 たしかに開閉かいへいして どこかへつながっている
 けれどわたしは
 出入でいりをゆるされなかった
 背丈せたけひくくて ドアノブにがかからない
 なけなしの体重たいじゅうすと うしろからびてきて
 だめだよときかかえられる
 そのたびわたしは いてた
 だれかが出入でいりするのを たしかにたのに
 わたしにはゆるされない状況じょうきょうに 抗議こうぎしていた

 いま わたしの背丈せたけびて
 それでもとびらひらかない
 異界いかいわたりの友人ゆうじん
 ふらと とびらをすりけて
 その瞬間しゅんかんにだけ こうがわ
 とびきりのかがやきが 網膜もうまくはらって
 ああ いつもこの心臓しんぞう
 やすだけやして
 そうしてちぼうけだけをらう

 異界いかいわたりはかえってきて
 しだいに彼女かのじょゆめうつつじりあい
 夢遊むゆう気味ぎみ会話かいわばかりになって
 周囲しゅうい当惑とうわくさせながら
 それでもいつも ゆめうつつとびら
 勝手かってわた
 うできずのこしてもなお
 異界いかいわたりはまらない
 そうして かえってきたら
 とびきりの ひとりよがりの
 おもばなしりまくんだ

 いま わたしの背丈せたけびて
 とびらわたろうとするきみの
 かかえてめることだってできる
 きみのと なけなしの社会性しゃかいせいあんじるなら
 現実げんじつとどめることだって できる
 けれど
 そのとびられたとき からだげられた
 あののわたしのうったえが
 こうの景色けしきに かれた心臓しんぞう
 きみをしばけようとするうで
 必死ひっしくそうとするのが
 わかるから

 禁忌きんきばかりの
 明日あしたれない
 きみとわたしの あやうい世界せかい
 たがいにいたり したりしながら
 この憧憬しょうけい焦燥しょうそう
 くしながら
 とびらけよう
 わたしにゆるされた方法ほうほうつけて
 いつか けよう








 東方Projectの音楽CD『秘封ひふう俱楽部くらぶ』シリーズに登場する大学生『宇佐見うさみ蓮子れんこ』を基にした詩