詩 恩知らず
詩 恩知らず
幾度の季節を見上げて
人の交わりを目で追って
出逢いも別れも
自分なりの窮地も 一端の絶望も
何度 何度も 逡巡を歩き回った
だのに
あなたの 自分の利にもならない優しさに
いっさい迫ることができない
力の誇示でもなく
物質や報酬を求めるでもない
ただ 淡々とした献身に
さわることさえできない
理解した気にさえ なれない
ぼくが捧げられるのは
自分の生き残りをかけた 未来に対してだけなのに
あなたが いつも筆を執るのは
世界に住まう人のことだった
彼らの生存と安穏のために
その身を捧ぐさまを
ひとつもわかれないまま
教わったすべてを
自分のためにしか使えないまま
離れていく
なすべきだったことが
遠くになってゆく
『東方永夜抄』に登場する半人半獣『上白沢慧音』を基にした詩