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NO LIFE KING - Kanata Labo【和訳】

“ 「お前が明日死ぬのなら
僕の命は明日まででいい
」 ”

VOCALOIDメタル系音楽サークルKanata Laboのmini Album
AZURFALL AXION”からリードトラックです。

このサークルの楽曲はヘヴィで疾走感に溢れていて聴いてて気持ちいいですね……好きな曲いっぱいあるのよな。

歌詞はアニメのキャラクターを題材にすることがほとんどで、
今回の楽曲もそうなっています。
訳もなるべく原作に寄せました。


Welcome to the world of cold blood night
A story that runs red and dries black
You may do all you believe you can

ようこそ、冷血の夜の世界へ
鮮血が走り浅黒く血液が乾く物語
お主が信じられる限りを信じるがいい

Come close, my servant
If you kill me you will become human again
Please save me once more again

近う寄れ、我が従僕よ
儂を殺せば、再び人間に戻れるだろう
もう一度、儂を助けてはくれぬか

I searched for a place to die
I thought it would be okay to die

死に場所を探していた
今がその時だと考えた

But when death was before me
I found myself frightened heart

儂よりも先に死ぬ者の姿を見て
怖くなっている自分に気付いた

For the first time in my life
I was saved by the "another"

初めて儂を救ったのは
お主とは違う者だった

That's why I want to die for you
It's time to say

お主のために死にたいと思う
だから今が言うべき時だ

"Good night"
I don't want to repeat mistakes
"Good night"
Please kill me with your gentle tears
"Good bye"
Good night...

「おやすみ」
もう過ちを繰り返したくはない
「おやすみ」
どうか優しい涙で殺してくれ
「お別れだ」
おやすみ......

If you die tomorrow
then my life shall end there too

「お前が明日死ぬのなら
僕の命は明日まででいい」

Please save me once again
Take yourself the life you saved

もう一度助けてはくれぬか
お主が救った命を、今度は奪ってはくれぬか

Kill, kill, kill
Kill me tonight
I don't want to repeat mistakes
Please kill me with your gentle smile
Take yourself the life you saved

殺せ、殺せ、殺してくれ
今宵月の下でその生涯を終えるのだ
もう過ちを繰り返したくはない
どうか優しい涙で葬ってはくれぬか
1度は救った命を、その手で奪い去ってくれぬか

Welcome to the story of the blood night
ようこそ、血塗られた夜の物語へ

Close, close, my servant
If you kill me
You will become human again
Please save me once more again

もっと近づいてくれ、我が従僕よ
儂を殺せば、お主は再び人間に戻れるだろう
もう一度、儂を助けてはくれぬか

World of cold blood night
A story that runs red and dries black
You may do all you believe you can

冷血の夜の世界
血乾き肉踊る物語
お主が信じるすべてを果たせ

" Good night "
「おやすみ」

I will die for you
「助けて」くれぬのか

If you die tomorrow
then my life shall end there too

「お前が今日を生きてくれるのなら、僕もまた今日を生きていこう」

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歌詞の原作について解説です。この曲は、
西尾維新原作の学園怪奇譚「化物語」のエピソードの1つである「傷物語」のストーリーで、
当時高校2年生の主人公阿良々木暦と、
鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの出会いの物語とその結末が描かれています。
全く違う世界で、全く違う寿命で生きる二人が、全くの偶然で道を交え、
血と夜と血を幾多重ねた数日間の物語であり、二人の出会いの物語。

これはほんとにシリーズ屈指の傑作ですね。
本編の物語の過去編であり読者にはある程度結末がわかっているにも関わらず、壮絶な出会い悲劇の最後血湧き肉躍る戦闘描写は手に汗握りながら読んだ記憶があります。
劇場版も三部作で若干尺が長いように感じる場面もありましたが、回を追うごとに面白くなっていきましたね......3つ目は独特な表現が多様に使用されるグロテスクなシーンが衝撃だったなあ。アニメ本編とキャラデザや作画を変えて一新する試みは表現の斬新さという意味で成功だったと思います。アニメの時点で表現が斬新すぎてこれ以上の衝撃を与えるにはこの方法が最適だったのかもね......

さておき......この歌詞は「ようこそ、夜の世界へ」という阿良々木暦とキスショットの出会いから始まり、お互いの思いが交錯しながら進行していきます。
阿良々木暦の「お前が明日死ぬのなら~」は本編で何度も言う重要なセリフなので外せないですよねー......
初代怪異殺し関連のワードがAメロBメロにかけて滔々と語られ、キスショット二度目の「助けてくれぬのか」に繋がるのは素敵な展開で……まるで傷物語本編のクライマックスを追っているような歌詞でしたね。

同じ英詞が二度繰り返されて曲が終わりますが、おそらくこれは阿良々木暦定番の「お前が明日死ぬのなら」と「お前が今日を生きてくれるなら」を英詞上で同じ表現をしつつ日本語では違う2つの台詞を表してるんだろうなと勝手に解釈しました。この辺は傷物語以降の阿良々木暦のモットーでもありますよね。
しかしまあこうして見るとこの二つ、同じことを言ってるのに2つ目は希望に溢れたいい言葉だよなあ。

これ以上あんまり言うとネタバレになるのでやめておきますが、
この物語における吸血鬼の永遠の寿命が、当人達にとってどういうものか......
主従関係とは何か......一生業を背負い続け、その業を今日を生きる力に変え支えあう二人は……なんて考えると本当に素敵な二人だと思います。
まるで天災のような巡り合わせから罰のような業を背負うことになった二人がここまで一蓮托生になってるのなんかすごくいいですよね……

背負った運命に対し「死」から「生」へと視野を変えたこの言葉を境に、
偶然からの贖罪から地獄までの付き添い人へと、
二人の関係は本物になったのでしょう。

If you die tomorrow
then my life shall end there too

「お前が今日を生きてくれるのなら、僕もまた今日を生きていこう」