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Synergy - Dance Gavin Dance【和訳】

"安全な場所で眠ろう"
"自分の価値とは何かを、ずっとずっと思い出さないように……"
Sleep on my perch
Take some time off to forget what your worth
Never

Album: 10th Album "Jackpot Juicer"


No frowns around
I’m now an older clown
I think I honked my spleen

しかめ面の一つもない
道化となって久しいが
腹の底から怒りのようなものが込み上げている

The money came to answer my prayers
金はもう十分なんだ

If you filming me piss
It’s probably best, I stop the stream
My colon is golden, eyes they gleam

僕の排尿を撮影するなら、もう配信は止めるぞ
編集で謎の光を入れながら

Waking up
Courage in my cup
Last was night was rough
Don’t remember much

揺り起こす
立ち向かうための強さを
昨日の夜は荒れていた
もう思い出したくもない

Waking up
Courage in my cup
Last night was rough
Doing what I love

探している
起き上がるための理由
昨日の夜は荒れていた
好き好むことばかりをして

Running on fumes
What can I do?
Waiting for my score to come through
Desperate for some motivation

出涸らしなんだ、どうすればいい?
打破できるのを待ってるんだよ
動機に対して必死なんだ

Running on fumes
Checking my views
Scrolling for a comment that proves
I don’t need more motivation

怒りを通り越して疲れ果てた
僕の視界を覗いてくれ
スクロールされていくコメント
これを見たら、もう動機は他にいらないだろ?

I'm locked in
I'm stocked up
Often
I'm shopping

My face is frosted
よくあるんだ
閉じ込められること
買いだめすること
買い物すること
曇った気分が顔に出ること

I'm living life as if I'm already dead
I'm spilling cups and then I’m fucking the fed

死にかけているとしても、生き続けている
動機が溢れて、零れ出る

I’m locked in
And topped up often
No caution
My pace is toxic

抜け出せない状況で
時々、容れものに液体が注がれていく
気遣いもなく
危険な間隔で

I’m living life as if I’m already dead
Open and shut you know I gave it my best

ほとんど死んでいるのに、まだ生きているのか
誰にだって分かるさ、僕が死力を尽くしたことは……

Was feeling panicked so I bought myself knife
Then I felt empty so I went and got a myself a wife
I tried to learn about the meaning of my life
But I couldn’t quite decide on which good book to buy

パニックになるから、自分用のナイフを購入した
空虚さを感じたから、自分の妻を用意した
自分の人生の意義について知ろうとした
でも、どの善き本を買えばいいのか、決められないままだった

Cause I’m like that
Priceless
Finest
Ice white platypus
Blessing the things that I touch
Worship me worship my stuff

なぜなら僕は、
かけがえのない、最も優れた、
氷の、純白の、カモノハシだから
触れたもの全てに息吹を与える
我を讃えよ、我が所有物を崇めよ

Fitted with a gimmick
Make a cynical wow
Many men went in it
But they couldn’t get out
All of the things that we touch
Suck all the life out of us

具備されたギミック
悲観的な感嘆を生み出す
数々の男がそこに向かい、
そして誰も帰らなかった
僕らが触れるもの全てが、
僕らから生きる力を奪っていく

Running on fumes
What can I do?
Waiting for my score to come through
Desperate for some motivation

出涸らしなんだ、どうすればいい?
打破できるのを待ってるんだよ
動機に対して必死なんだ

Running on fumes
Checking my views
Scrolling for a comment that proves
I don’t need more motivation

怒りを通り越して疲れ果てた
僕の視界を覗いてくれ
スクロールされていくコメント
これを見たら、もう動機は他にいらないだろ?

I'm locked in
I'm stocked up
Often
I'm shopping
My face is frosted

よくあるんだ
閉じ込められること
買いだめすること
買い物すること
曇った気分が顔に出ること

I'm living life as if I'm already dead
I'm spilling cups and then I’m fucking the fed

死にかけているとしても、生き続けている
動機が溢れて、零れ出る

I’m locked in
And topped up often
No caution
My pace is toxic

抜け出せない状況で
時々、容れものに液体が注がれていく
気遣いもなく
危険な間隔で

I’m living life as if I’m already dead
ほとんど死んでいるのに、まだ生きているのか

I’m living life, I’m living life, as if I’m already dead
I’m living life, I’m living life, as if I’m already dead

生き永らえている、死にかけているのに
死んだも同然なのに、まだ生きなければならない

Hole in the world
Holding some pearls
Making it tough cause I’m never enough

世界は欠落している
いくつかの真珠を抱えながら
僕は決して満たされない、状況は厳しくなるだけ

Hole in the earth
Sleep on my perch
Take some time off to forget what your worth
Never

地球は穴が開いている
安全な場所で眠ろう
自分の価値のことなんて、ずっとずっと思い出さないように……




【訳について】


No frowns around
I’m now an older clown
I think I honked my spleen

しかめ面の一つもない
道化となって久しいが
腹の底から怒りのようなものが込み上げている

The money came to answer my prayers
金はもう十分なんだ

If you filming me piss
It’s probably best, I stop the stream
My colon is golden, eyes they gleam

僕の排尿を撮影するなら、もう配信は止めるぞ
編集で謎の光を入れながら

■歌い手は恐らく怒っている
・spleen……脾臓
 vent one's spleen「怒りをぶつける、怒りをあらわにする」
 honkも「vent:排出する」ではないにせよ「鳴らす」。
 honk my spleenは、vent one's spleenに意味が近い
 つまり、歌い手は怒っているのでは?

■アーティスト、演者、役者などの見世物的苦悩を、
 ストリーマー(配信者)に擬えている?

・No frown around:frown(しかめ面)がない状態
・The money came to answer my prayers:夢を叶えるだけの金は十分ある
  → これ以上、無理をして日銭を稼ぐ必要もない
・filming me piss:排尿している光景を撮影する
・I stop the stream:配信を止める
・My colon is golden:腸が黄金に輝く
 eyes they gleam:両目が輝く
  → これっていわゆる「自主規制」では?
   
(腸=下半身にモザイク……謎の光……
    両目に光を入れるのは匿名性か)

 すなわち、自主規制に値する自身の行為(排尿など)を見ている大衆に対して、「しかめ面」すら最早ない、という、ある種の「モラルのなさ」「常識のなさ」に疲弊している?
 (後述の歌詞にも、この方向を補足するものがある)

MVの演出でも、この歌詞の箇所は「怒り」の感情を露わにしている(原因こそ歌詞と違うが)。



Waking up
Courage in my cup
Last was night was rough
Don’t remember much

揺り起こす
立ち向かうための強さを
昨日の夜は荒れていた
もう思い出したくもない

"courage in my cup"はこの訳の方向性を決定づけた。
読み取った方向性が、歌詞に含有されたものと合っているか不明だが……。

cupの解釈:感情のるつぼ、受け皿
・ググるとエッセイ的文章が大量に出てくる。
 新約聖書に収録された『マタイによる福音書』を引用したものが興味深い

そのとき、ゼベダイの子らの母が、その子らと一緒にイエスのもとにきてひざまずき、何事かをお願いした。
そこでイエスは彼女に言われた、「何をしてほしいのか」。彼女は言った、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの御国で、ひとりはあなたの右に、ひとりは左にすわれるように、お言葉をください」。
イエスは答えて言われた、「あなたがたは、自分が何を求めているのか、わかっていない。わたしの飲もうとしている杯を飲むことができるか」。彼らは「できます」と答えた。
イエスは彼らに言われた、「確かに、あなたがたはわたしの杯を飲むことになろう。しかし、わたしの右、左にすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしの父によって備えられている人々だけに許されることである」。

"WordProject"より

Because only when we fully realize that the cup of life is not only a cup of sorrow but also a cup of joy will we be able to drink it.
命の杯は、悲しみの杯であるだけではなく、喜びの杯でもある。それを完全に理解して、初めて杯を飲むことができる。

Can you Drink the Cup? - Henri Nouwen's book

新約聖書の文章自体が示唆や解釈の幅に富んだものであるため、ここで使用されるcup(杯)には様々な解釈があると考えられる。
引用元の"Can you Drink the Cup?"にあやかりつつ独自の言葉にしたい。

 → cup:感情のるつぼ、感情の受け皿
 ・人間の生涯において、あるいは瞬間においてさえ、
  その人が抱く感情は、1種に限らず、
  その人が持つcup(感情の受け皿)は、
  複数の感情が入り混じる交叉点となりえる。

 ・cupの中にある感情は、
  量として、増えたり、減ったり、
  種類として、増えたり、減ったり、
  満ちている時、溢れている時、枯れている時、ちょうどよい時……
  生きるにあたって、これらの状態を繰り返している

 
この解釈を活かした訳として、
・"I'm locked in… My face is frosted"の訳は、cupに感情を溜め込むことを「買いだめ(I'm stocked up)」、cupから感情が上手く出て行かない時を「閉じ込められる(I'm locked in)」、感情が思わず溢れてしまう時を「表情が曇る(My face is frosted)」と解釈して訳した。ようは、感情の移り変わりやそれに対して人が行ってしまうアクションを表した歌詞なんだなと思って訳した。
・コーラスの歌詞"I'm spilling cups and then I’m fucking the fed"の訳はcupの考えを投影している



Running on fumes
Checking my views
Scrolling for a comment that proves
I don’t need more motivation

怒りを通り越して疲れ果てた
僕の視界を覗いてくれ
スクロールされていくコメント
これを見たら、もう動機は他にいらないだろ?

■単に「疲れた」ではなく「怒り疲れた」
run on fumes:使い果たす
fumes:「煙」だが類語としてsmokeがある。
    smokeと異なり、「爆発」「怒り」のような意味がある。
 → 「怒りの感情を使い果たした」?

■これ以上、コメントで怒らせないでくれ
scrolling for a comment:スマホでコメントをスクロールしている
 → 極めて現代的表現。前述のstream(配信)にも通じる。
   「自主規制」の方向性も間違っていないように思える根拠の一つ。
a comment that proves…:コメントが~を証明している
I don't need more motivation:これ以上モチベーション(動機)はいらない
 → 「これ以上モチベーションを与えないでくれ」
 → 前述の"run on fumes(怒り疲れた)"と合わせると、
   「これ以上怒らせないでくれ」
checking my view~… … more motivationまでの文:
 「俺の見てるものをご覧よ。このコメントを見たら分かるだろ。
  もうこれ以上、怒りの動機を与えないでほしいよ」

 極めて現代的な苦悩を表しているように見える。
 前述の配信/自主規制の話と併せて。



I’m living life as if I’m already dead
Open and shut you know I gave it my best

ほとんど死んでいるのに、まだ生きているのか
誰にだって分かるさ、僕が死力を尽くしたことは……

・open-and-shut:単純な、明快な
 ただしハイフンなしで普通に「開閉」とも訳するそうなので注意……。
 ここではハイフンがないものの「単純な、明快な」として訳した。
・I give it my best:全力を尽くす
 日本の中学英語で頻繁に習う"do my best"の言い換え版か。

ジョークに満ちたMVだが、ある種の皮肉も感じる気がする。
・"I'm living life as if I'm already dead"の歌詞の裏で、
"DEAD OR ALIVE(生きるか死ぬか)のキャプション
(生きながらに死んでいる状態を歌い手は訴えているが、
一方でよく言われる「生きるか死ぬか」。
二者択一を選べず苦悩する歌い手を、杓子定規にバッサリ切るような言葉。)
・"I'm living life as if I'm already dead"の歌詞の裏で、
RAT KING EXTERMINATION(ネズミの王を根絶(殲滅)します)
(人間がいくら生き死にを憂おうと、
ネズミにとっては間違いなく「生きるか死ぬか」の世界)
・CMでclown(道化)を演じるRAT KING EXTERMINATIONer
(生き死にを憂う人の傍らで、
道化として他の生物にDEADを与える役をする人)



Was feeling panicked so I bought myself knife
Then I felt empty so I went and got a myself a wife
I tried to learn about the meaning of my life
But I couldn’t quite decide on which good book to buy

パニックになるから、自分用のナイフを購入した
空虚さを感じたから、自分の妻を用意した
自分の人生の意義について知ろうとした
でも、どの善き本を買えばいいのか、決められないままだった

■歌い手の幼さ、未熟さ
so I went and got a myself a wife:
・"wife"に対して無機質すぎる表現では?
 ・get O1 O2:「O1にO2を与える」
 ・I felt empty:「空虚さを感じた」
 ・…so~「…だから~」
 → 「虚無感があったから、自分自身に妻を与えた」
 → 「自分のために妻を用意してきた」
 ・婚姻に対してコミカルでブラックジョークに近い言い方とも捉えられる。冒頭でI'm old clown(俺は道化師だ)とさえ言っているし。
 ・一方で、「妻」を本当に「用意してきた」と捉えているなら、なんだか無機質すぎる言い方にも思える。結婚というイベントがあるから結婚しました、他人に言われて結婚しました、という、消極さを感じるような。

・wifeは大人的言い方。相方ならばgirlfriendでいいはず。
 → 歌い手が肉体的に大人であることを示している?
  (これが実は、海外オタクのmemeで、
   "wife(俺の嫁)"を表しているなら別だが……)

 この部分の個々の歌詞は、
 この後に続く歌詞の訳への導入にもなる。
・パニックになるからナイフを買った(護身用?)
・空虚を感じるから相方を求めた(未熟な、依存的な恋愛)
・人生の意義を学ぼうとした(モラトリアム的、10~20代的)



Cause I’m like that
Priceless
Finest
Ice white platypus
Blessing the things that I touch
Worship me worship my stuff

なぜなら僕は、
かけがえのない、最も出来の良い、
氷の、純白の、カモノハシだから
触れたもの全てに息吹を与える
我を讃えよ、我が所有物を崇めよ

■自虐的な自称「純粋」

・I'm like that priceless, finest, ice white platypus:
 前段の歌詞から続いて訳すと、もはや一周回って自虐すら感じる。
 ・ice white…:氷の、純白の → 強調が強すぎる、幼ささえ感じる。
 ・白は清廉潔白さのイメージを持つ色だが、
  同時に「幼い」「軽い」印象も与える。
  「汚してはいけない」→過保護さを喚起させる
 → 人間的な未熟さを擬えた表現?
   前段の"got a myself a wife"も、
   歌い手の肉体的な大人さを表現していて、さらに痛々しい。

・blessingやworshipのくだり(崇拝してほしい、認めてほしい)も、
 自分が一番偉いという反抗期な子供を、
 肉体的に大人な時分にやっているように見えてしまう……。

そういう光景に見える。それに対する良い悪いはともかくとして。



Fitted with a gimmick
Make a cynical wow
Many men went in it
But they couldn’t get out
All of the things that we touch
Suck all the life out of us

具備されたギミック
悲観的な感嘆を生み出す
数々の男がそこに向かい、
そして誰も帰らなかった
僕らが触れるもの全てが、
僕らから生きる力を奪っていく

・suck the life out of ……~から生気を吸い取る、~の活力を失わせる
 (ググると、
  ハリポタやホラー映画のDementor(ディメンター)が出てくる)

前段の、
"Blessing the things that I touch"に対する
"All of the things that we touch"と見える(韻踏み)が、
この二つを対比するのは非常に皮肉的に見える。

MVではネズミの糞を掴んでポイしているシーンですが。
そんなもん触ったら、確かに生気も吸われますわな。

Hole in the earth
Sleep on my perch
Take some time off to forget what your worth
Never

地球は穴が開いている
安全な場所で眠ろう
自分の価値とは何かを、ずっとずっと思い出さないように……

・hole in the earth:「地球に空いた穴」
 ・Deftonesのシングルの曲名でもある。
  この曲の歌詞は「俺の周りにめっちゃ不快な奴らがいる」
         「地球に穴が開いている、俺はもう帰る」
  という感じで、holeを、「嫌なやつらから逃げる先」
  あるいは「嫌な奴らのたまり場」として捉えている。
  要するに、この曲に置き換えると、
  earthにholeが見える/在る状況自体が、
  歌い手にとって真に喜ばしいものではない
 (嫌なことが存在する状態、目に見えてしまう状態)のでは?


・perch:止まり木、高くなっている場所、運転席、有利な(安全な)場所
・take some time off:少し休む、小休憩を取る、気分転換をする



曲名のSynergy(シナジー、相乗効果)が示すところは、
一意には分からないが、下記かも。
・Vo. featuringのこと(Feat. Rob Damiani)
・表現者とコメント者の相互作用が生み出す効果
 → それに疲れた、という結末を示しているので、
   曲名がそういう意味だとすれば、明らかに皮肉だが。


2022年現在とはかけ離れた時代のように見えるMV
(黒電話、重い駆除機を一人で運搬する、テレビがダイヤル式)、
非常にコミカルでジョーク的なMVに対して、
歌詞は非常に現代的かつ風刺的、個人的なもの、という、
ギャップ的な魅力を持つ楽曲でした。
そういうギャップ感を"Synergy"と呼称しているのかもしれない。

また、自身の幼さを露呈するような歌詞(というニュアンスを出していることに対して、自覚的でないとは考えづらい。10thアルバムだし)から、
一方的に世間(コメント側)を非難しているのではなく、自身の幼さもまた、表現者-コメント者間での悪循環"Synergy"を生み出す一端になっているのかもしれない、
という、自省的な観点が含まれているのかもしれない。
だとしたら、一方だけではない豊富な視野があり、素敵だと思いました。