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【和訳】Evanescence - My Immortal


“けれど、きみとそうしていること自体が
ぼくのすべてだったんだ”
But you still have all of me
 


Band: Evanescence (1998 - )
Album: Fallen (2003)
Vocal: Amy Lee
Produce: Ben Moody
Written: Amy Lee & Ben Moody


I'm so tired of being here
Suppressed by all my childish fears
And if you have to leave
I wish that you would just leave
'Cause your presence still lingers here
And it won't leave me alone

 子供みたいに拒絶する自分から
 いつになったら抜け出せるんだろう
 きみ、行かなきゃならないんなら
 どっか行っちまえよ、そのほうがいいよ
 きみの気配なんか どうせぐずぐす残ってるし
 だから独りになれたりなんかしないし

These wounds won't seem to heal
This pain is just too real
There's just too much that time cannot erase

 傷だらけになったけど ひとつも治る気がしない
 痛みがいつまでも生々しい
 時間じゃ癒せないものばっかりだ

When you cried I'd wipe away all of your tears
When you'd scream I'd fight away all of your fears
And I held your hand through all of these years
But you still have all of me

 きみの涙を拭うのは いつもぼくだった
 きみの悲鳴を恐れを取り去るのは いつもぼくだった
 何年間も、その手を握ってたよ
 けれど この身のすべてを預けていたのは
 ぼくのほうだったよ

You used to captivate me
By your resonating light
Now I'm bound by the life you left behind

 共鳴によって きみから放たれる光は
 ぼくを捉えて離さなかった
 いまは きみの面影によって
 ぼくは縛り付けられてる

Your face it haunts
My once pleasant dreams
Your voice it chased away
All the sanity in me

 きみの顔がいつもちらつくから
 楽しかったはずの夢も
 きみの声が聴こえてきて
 まともに見ていられない

These wounds won't seem to heal
This pain is just too real
There's just too much that time cannot erase

 治る気配のない大量の傷
 いつまでも収まらない痛み
 時間じゃ癒せないものばっかりだ

When you cried I'd wipe away all of your tears
When you'd scream I'd fight away all of your fears
And I held your hand through all of these years
But you still have all of me

 きみが泣いたら いつもそれを拭ったよ
 きみの嘆きを いつも取り去ろうとした
 何年間も、その手を握り続けたよ
 けれど この身のすべてを預けていたのは
 ぼくのほうだったよ

I've tried so hard to tell myself that you're gone
But though you're still with me
I've been alone all along

 きみはもういないって事実を
 必死に言い聞かせてきた
 けれど 君はまだいて、消えてはくれない
 だったらぼくは、はじめから今までずっと一人
 そうに決まってる……

When you cried I'd wipe away all of your tears
When you'd scream I'd fight away all of your fears
And I held your hand through all of these years
But you still have all of me

 きみの涙を拭っていると思ってた
 きみの慟哭に寄り添っているつもりだった
 きみの手を握り続けていた
 けれど、きみとそうしていること自体が
 ぼくのすべてだったんだ





 どうしようもない失敗や、取り返しのつかない過去を、いつまでも引き摺って、いつまでも長いこと傷ついてしまう、そういう状況が世の中にはいくつもあるように思います。
 誰かがそうなっているとき、引き摺る人に前を向いてほしいがために、さっさと吹っ切れなよ、考えたってしょうがないよ、という言葉をかける人も現れてきます。けれど多くの場合、引き摺る人は簡単には吹っ切れられません。まったく反発することもあるし、そう言われて表面的には平気さを繕う人もいる。けれど、ふとしたときに泣きたいのを堪えられなかったり、思い出して固まってしまったり、現実を生きていくために影響するほどの苦しみを拭えなかったりします。

 「過去のことを悔やんでもしょうがない、変えられる未来を考えなければならない」とは、手垢がつくほど語られた、ある種の合理性を持った主張です。けれど、そうはわかっていても、そのことを頭で理解しようとしても、どうしてもできない状況や、そこに立たされてしまう人というのは、確かにいるのです。

 この曲の歌いだしは、そういうどうしようもなさから始まっています。抜け出すべき悲しみだと分かっていても、抜けられない、という嘆きから。

I'm so tired of being here
Suppressed by all my childish fears

 子供みたいに拒絶する自分から
 いつになったら抜け出せるんだろう

 その心境や状況を知っている人がこの楽曲『My Immortal』を聴くのと、その感覚がない人が聴くのとでは、まったく違った感想になると思います。ここから先への歌詞に思うことも、ただ意気地ない言い訳を並べているだけの惰弱な人と思うか、それとも、理屈で拭うことが難しい苦境で戦っていると思うか。

 こういう話は以前の記事でもしたことがあります。理屈ではそれが正しいと分かっていても、そのことはちゃんと理解しているはずでも、それに納得しようとするとき、そのことを決断しようとするとき、どうしようもなく涙が溢れたり、感情を抑えられないことがある、という話です。まさに、大切なものとの別離、その後に付き纏う悲しみを歌ったこの曲にも、同じようなことが起きていると思うのです。


 思うにこの漫画の肝要な部分は、どんなに正しいと思う選択でも、互いに納得した上での決断を追求しても、理性と感情の衝突が完全には拭い切れなくて、思わず心の底から引き止めてしまう場面が、人間には存在するということだ。理性的には相手の決断を尊重できても、感情的には頼むから行かないでくれ、と願うことはある。理性的に正しいことが分かっているからこそ、その涙に当の本人は混乱する。でもそれは、たった一人だけが抱く貴重な現象ではなく、きっと誰もが抱える矛盾なんだよ、という不思議な優しさが、この作品には漂っている。

上記記事より引用


 この曲の場合、相手のために尽くしていると思っていた、ある種煩わしいとさえ思うこともあったであろうことが、翻って自分にとって不可欠な支えになっていたことに、失って初めて気づいたという風にも見えるので、歌い手の混乱はより深いものだと思います。それを、前を向きなさいとか、吹っ切れろよとか、わかってんならやりなよ的なことを言ったところで、その人の傷には何も解答が出せないと思います。
 そういう、万人が経験することのある、どうともできない悲しさを歌っているから、この曲は名曲なのだと思います。



なんで立ち直らなくちゃいけないの
その悲しみを一生背負って生きてもいいんじゃないの

山口つばさ『ブルーピリオド』




追伸:
 2003年の曲を今になって訳した理由は、Dayseekerという一押しバンドがこの曲のカバーを出していたからです。実はそれでこの曲を初めて知りました。
 Dayseekerは4月にアコースティックアルバムが出るらしくて。楽しみです