詩 ともしび
詩 ともしび
現代都市にて
わたしのできる限界は
とうに出し切ったよ
エンジンの駆動音
潤滑油の枯れ
もう 何度も
渇ききって そのたび起き上がって
希望のひとつもない中に
無理に灯りをともして
こころの蓄光塗料に貯めた光で
なんとか前を向いたけど
もう ここまでじゃないかな
よくやったほうでしょ
理想郷も
夢の国も
目指すべき大義も
宇宙も 深海も 冒険譚も
なんにもなくした時代に
ありもしない望みを
妄想の魔法に託して
それでも よくやったほうでしょ
眠りがほしい
幻想がこの世にないのなら
深い眠りが
ほしい
信仰によって
像を確立した
空想上の友人、教師、先達は
一夜明けの灯籠のように
ともしびを消していった
その残滓を
黒い炭から復元して
何十年も よく
生き永らえたもんだ
誰の目にも映らなくとも
あなたたちの存在だけが
わたしの
迷妄する
果てない視界の
唯一、たよりにできる
ともしびだった
さようなら、
いいや、今度こそ
一緒にいられるといいな
『東方深秘録』に登場する女子高生『宇佐見菫子』を基にした詩