詩 独りっきりの本読み
詩 独りっきりの本読み
独りっきりの
本読みの視界は
次第に 世界からずれていく
同じ文章を
擦り切れるほど読み返しても
きみの目線が吸収するのは
きみの本能と思考回路が選んだ
ある種の自己正当化のような
都合の良いことばかりだ
そんなことばかり奏上して
心を どうしようもなく輝かせてしまう
きみは
その偏った輝きのために
いずれ 笑われるだろう
いずれ 見下されるだろう
同じ本を読む誰とも
その綺麗な視界を 共有できないかもしれない
けれど 偏って 傾いた輝きは
どうしようもなく きみの世界を照らしていた
どうしようもなく きみの視界のすべてだった
たとえ 認められずとも
たとえ だれにも説明ができなくても
たとえ 既存の論理に当てはまらなくとも
きみの心を震わせたものは
そのとき生まれた情景は
嘘なんかには なれない
『東方香霖堂』に登場する本読み妖怪『朱鷺子』※を基にした詩
※ファンの間の呼称であり、正式名称なしのキャラクター
また、こちらの詩は先日開催されたコミックマーケット104にて、会場でいただいたリクエストに応じて制作した詩となります。リクエストありがとうございました。