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塵を積む

自分が中学生の頃、吹奏楽の強豪校に密着取材をする番組が放送されていた。

先生から毎日怒鳴られたり、部内が分裂したりしながらも、全員で力を合わせてひとつの音楽を作り上げていく様子は大変人気があった。
この番組の影響で、高校は吹奏楽の強豪校を選択した同級生もいたと聞く。

自分はこの番組のことが嫌いだった。
辛いことにや苦しいことに対して、泣きながらでも立ち向かうという状況がどうにも理解できなかった。
泣くほど嫌なら辞めてしまえばいいのに、そう本気で思っていた。

また、この番組を見て感動する周囲のこともよく理解できなかった。
怒鳴っている顧問と泣いている学生がいる、という状況を見て、なぜ感動するのか全く分からなかったのだ。

放送時から約20年が経ち、顧問が怒鳴っていた理由も、学生が泣いていた理由も、以前よりは理解できる様になった。
だが、苦しみの先に手に入れられる喜びに関しては未だに理解できない。
努力という経験そのものと、人間に不可欠な何かの感情が欠如しているのだと思う。

吹奏楽の強豪高校に入学した知人たちは、現在どのような人生を歩んでいるのだろうか。


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