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いい夢をみる(1) 空を飛ぶこと

面白い本はいっぱいあるけど、悪夢を見るものが多い。
自分がいい夢を見られるために書き始めたら、どんどん面白くなった。
夢を書けるようになりたいと思う。




空を飛ぶこと

たどり着かない事はわかっているのに、それでも歩く。茫然と何も言わない。ただ歩くだけで良い。偉大なものは歩くだけである。それはつまり、飛んでいるという事だ。空は飛べる。宙に浮ける。浮いたらとても気持ちが良い。街を見下ろして、友達に手を振ろう。向こうは呆然としているけど、構わない。だって飛べるはずなのに、飛べないと思っているだけだから。

動物達は話しかけてくれる。鳥は特におしゃべりだ。「話せるのに、話せないふりしてるよね」とか、やっと少しだけ彼らの言葉がわかる。草もこっちに向かって手を振っていたのだと、それだけを思い出す。どうしてかを考えると落ちそうになるから、やめる。今は飛ぶのを味わおう。飛んでいく先々に、暖かいところと冷たいところがある。暖かい方へすすむ。暑すぎることろは苦手だけれど、刺激が欲しいときには丁度良い。そこで見つけた両親を選んでも良いだろう。きっと僕を大事にしてくれる。だけど今日は選ばない。楽しむだけだ。だって、まだ楽しみ足りない。

家の中に入ると、家は半分になっていて雨が降っている。押し入れの中ではセミが鳴いている。捕まえようとするけど、手が届かない。しばらく無視して本棚を眺めていたけれど、だんだん気になって仕方がない。
押し入れを見ると、セミがデカくなっている。いや、もともとデカかったのか。普通の三倍くらい。部屋の向こうの雨はまだ降っているし、ガジュマルは水を浴びに歩いている。風も吹いてきて、眠くなってきた。夕焼けが気持ち良い。外に出ると水平線に沈む前で太陽が止まっている。待っていてくれたようだ。もういいよ。というと、あっという間に沈んでしまった。もう一度見たいと思ったら、また明日と返ってきた。それでももう一度見たいと思ったら、少し短めに見せてくれた。ありがとう、太陽。

早速僕は、道を歩く事にした。道にはお菓子が落ちていて、拾って食べる。甘くておいしい。どんどん進んで食べていったら、また家に帰ってきた。家はさっきより大きくなっていて、僕は蟻の大きさになっていた。どっちがどうなったのかもよくわからないけど、なかなか家にたどり着かない。だから、空を飛ぶ事にした。魚のように空を泳ぐ。空気が流れて気持ちがいい。どういう仕組みかなんて気にする事じゃないのだ。飛ぶ事は気持ちが良い事だ。近くを飛んでいる鳥と話す。「人間は勿体ない」と、いつも話しているんだと教えてくれた。そんな夢を見て、とんでもなくいい気分で朝が始まった。一日の始まりにドキドキする。小学三年生の夏休みの感じを思い出して、思いっきり伸びをする。そうやって猫になって、雲に乗って散歩する。サンタクロースが遠くの空にいる。夏は空にいるのだというのは僕だけの秘密にしよう。彼にはたっぷりと休んで欲しいから。メリークリスマス!

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