【MIA】スポットライトMLB 〜超遅咲きの苦労人ブラゾバンが歩んできた不屈の野球人生〜
世界最高峰のプロ野球リーグ
メジャーリーグ(MLB)
このリーグには世界各国から多くの選手がプレーし、その実力,経歴,プレースタイルなどは様々。
大谷翔平選手のように華々しく活躍する大スター選手もいれば、活躍することが出来ず早々とフェードアウトしてしまう選手もいます。
そんな過酷なリーグにおいて、昨年とある1人の選手がメジャーデビューを果たしました。
その名は…
ワスカル・ブラゾバン
ブラゾバンはマイアミ・マーリンズに所属するドミニカ共和国出身の右投右打の救援投手で、身長は190cmあるのに対して体重70kgと細身の体系。(ちなみにこの70kgという数字は、現役のMLB全投手の中で最軽量クラスの数字)
昨年メジャーデビューを果たし、MLBで27登坂(全試合救援登坂)で防御率3.09という成績を残しました。
これだけ聞けば、MLBによくいる普通のメジャーリーガーという感じがすると思います。
しかし彼のプロフィールをさらに見ていくと驚く点があります。
それは…
年齢です
ブラゾバンは1989年10月15日生まれで今年34歳を迎える現在33歳。昨年7月24日にメジャーデビューを果たした際の年齢は32歳と、野球選手としてかなり遅咲きの部類に入ります。
そんな彼が、昨年なぜメジャーリーガーになれたのか、そしてここまで歩んできた道はどれほど過酷なものだったのか
今回はそんなブラゾバンの野球選手としてのこれまでのキャリアについて語っていこうと思います!
【ブラゾバンのキャリア】
プロ入り
ブラゾバンは2012年当時21歳の時にロッキーズのマイナー契約を交わし、MLBの世界に初めて入りました。
彼の出身国であるドミニカ共和国の選手達の多くは16歳,遅くても18歳ぐらいで契約するため、ブラゾバンの21歳でのプロ入りは珍しいケースです。
(ちなみに近年では、現在アストロズのエース投手フランバー・バルデスがブラゾバンと同じ21歳の時にプロ入りしています)
ブラソバンのプロ入りが遅れた理由は、彼がサント・ドミンゴ自治大学に通っていたためだったそうです。(彼のFacebookに書かれてるプロフィールから参照)
ちなみにこのサント・ドミンゴ自治大学は、ドミニカ共和国にある唯一の国立大学。かつて巨人に在籍してたエンジェル・サンチェスもこの学校に通っていました。
ブラゾバンのキャリアは、学校をドロップアウトして16歳ぐらいと早い段階でプロ入りする選手が多いドミニカ共和国の選手にしては珍しいキャリアですね。彼は秀才だったのですね。
マイナーリーグ時代(12〜17年)
入団時の評価が低かったブラゾバンでしたがプロ入り後は着実にマイナーリーグの階段をステップアップし、まずまずの成績を残します。
しかし15・16年の2年間は、怪我の影響でマイナーリーグで1試合もプレーすることが出来ず、16年オフのベネズエラWLでプレーを再開。17年はA+,AAでプレーも37登板,防御率5.77と結果を残せず、オフに自由契約。
そして彼をマイナー契約で獲得する球団はありませんでした。
独立リーグ時代(18〜21年)
プロ選手としてプレーを続けたいブラゾバンは、翌年18年にアトランティック・リーグ(米独立L)所属のランカスター・バーンストーマーズと契約します。そこでは37登板,防御率1.99と見事結果を残し、オフにはメキシコWLとベネズエラWLでプレー。
翌年19年もランカスターと契約するも、就労ビザが発給されなかった影響でプレーすることができず、この年はニカラグアWLでプレーしました。
また20年はコロナによるパンデミックの影響もあり、ブラゾバンはこのシーズンを全休しました。
彼の当時の年齢は28歳。大抵のこの年齢のメジャー経験なしのマイナー選手であれば、ここで野球選手としてキャリアを終える人も多く、ブラゾバン本人も周囲の人からは
「野球を辞めて、違う道を選べ」
と何度も言われそうです。
しかし彼はメジャーリーガーになるという夢を決して諦めることはしませんでした。
翌年21年に再契約したランカスターからアトランティック・リーグ(米独立L)所属のハイポイント・ロッカーズへトレードで移籍し、プレーを再開します。
長い間実戦から離れていたブラゾバンでしたが、ブランクを感じさせない投球を披露します。16登坂で防御率2.81と結果を残し、オフにはドミニカWLに参加。そこでは21登坂で防御率が驚異の0.46を記録しました。
そして独立リーグやウインターリーグでの活躍が評価され、マーリンズとマイナー契約。ブラゾバンは4年ぶりにMLBの世界に帰って来ることになりました。
マーリンズとマイナー契約
そして念願のメジャーリーガーへ
マーリンズとマイナー契約を交わしたブラゾバンは、開幕をAAAで迎えました。年齢的もラストチャンスという状況でしたが、ブラゾバンはマイナーで27登坂,防御率3.18,奪三振率11,3と32歳で初めてプレーしたAAAでまずまずの結果を残しました。
そしてブラゾバンは、2022年7月24日にこの年にメジャーデビューした選手の中では2番目に高齢となる32歳282日で、メジャーデビューを果たしました!
ブラゾバンの昇格は、当時マーリンズが故障者が信じられないほど出ていて、その穴埋め要員としての意味合いがありました。
しかし彼は、MLBで首脳陣やフロントの期待をいい意味で裏切る凄いピッチングを見せます。
メジャーデビュー戦でいきなり1回無失点に抑えると、その後も快投を続けました。
また、かなりの荒れ球ながらも最速で100マイルに到達する速球と時折90マイルを超えスプリットのように落ちるチェンジアップを武器とする投球スタイルで、打者を圧倒しました。
結果的にブラゾバンのメジャー1年目のシーズン成績は、途中失点が増えた時期もありましたが、27登坂で防御率3.09 K/9 11.3という好成績を残しました。
そしてさらなる活躍が期待された2023年の今年は、ビザの問題がなぜか発生し3月に入るまで母国ドミニカ共和国からキャンプ地のあるアメリカに入国することができず、キャンプ入りが大幅に遅れました。
ただこれまで数々の修羅場を乗り越えた男は、こんなピンチも難なく乗り越えます。
3月上旬に無事にキャンプ入りした後はブルペンや実戦で調整不足を予感させない投球を見せ、シーズン開幕からMLBでプレーすることが決まりました。
そして初めて迎えたMLBの開幕戦。ブラゾバンは開幕戦でいきなり登板。8回からの2イニングを投げヒット3本こそ打たれましたが、3奪三振,無失点に抑え見事結果を残し、今後への期待を抱かせました。
【終わりに】
・ドミニカ人選手にしては珍しい大学を経由しての21歳でのプロ入り
・所属球団(マイナー)の解雇
・2年間の全休1回と20年のパンデミックによる全休
・独立Lと多くの国のウインターリーグを渡り歩く
・数々の引退危機
・32歳でメジャーデビュー
これまでのキャリアを見ると、彼がメジャーリーガーになるまで歩んできた野球人生はかなり壮絶なものだったことがわかります。
またブラゾバンはメジャーデビュー戦後のインタビューでこう語りました。
彼のこのコメントを見ると、これまでの苦労が相当なものだったと感じられますね…
ブラゾバンの決して諦めない不屈の精神は、本当に凄いものだと感じます。
苦労続きだった彼の野球人生が、今後メジャーリーグで活躍することで素晴らしいものになることを祈り、マーリンズファンの私はこれからも彼を応援し続けていきたいなと思います。
Vamos Brazoban!! LET'S GO Fish!!