タッちゃんがゆく その2

 タッちゃんはひとりでどこかへ行くのが好きです。歩いてゆくのが好きです。目的地はあってもなくても良いそうです。目的がある時。たとえばタッちゃんは街から離れた町に住んでいるので、最寄りの駅まで歩こうとすると1時間かかります。いつもはスクーターで移動しますが、気まぐれに歩いてゆくことがあります。川を見ながら、丸い橋を渡りながら、暖かい時期に歩くそうです。

 タッちゃんは音楽が好きなので、散歩をする時は必ずイヤホンを着けています。高校生の頃、田中さんが首に着けていた蛍光黄緑のヘッドホンが忘れられなくて、同じ蛍光黄緑のイヤホンを着けてるって教えてくれました。


 新幹線に乗るのも好きだそうです。タッちゃんがタッちゃんの友人に合うために、ひとり新潟へ行った時も新幹線でした。タッちゃんにお金はありませんが、何に使いたいかを考える時、タッちゃんはとても自由なので、新幹線のチケットを迷わずポチるそうです。夕方の、オレンジ色になった鱗雲が空に点点ある頃、大宮だかなんだかを通り過ぎるのが好きだったそうです。

 あと、普通にバスに酔ってしまうので夜行バスはイヤなんだと言います。それと満員電車そのものが非常に嫌いだそうです。


 ひとりで移動するというのは、ひとりであることが大事なんだそうです。隣に人が座るんじゃなくて、前の人の頭がすぐ近くに見えるんじゃなくて、ドライバーの人のハンドルさばきが見えるんじゃなくて、体が膜で守られていることが大事なんだみたいなことを言っていました。


 タッちゃんは毎日から逃げるために旅が好きなのでしょうか。タッちゃんが音楽を好きなのは主人公になりたいからでしょうか。タッちゃんにも理解らないそうです。


















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?