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梅雨と生まれた場所と新紙幣。


ジメジメした日が続く。
7月の3連休が比較的涼しくて助かったのはよかったのだけれど、平日に雨が降ると頭は痛いし足元は濡れるし通勤が億劫でいけない。
これを書いているいままさに、いきなり強くなってきた雨に急かされるように、リュックをお腹の前に持ち直した。

バスが来るまであと8分。
早くきて欲しいと思っていたらちょうど着いた。
会社の最寄りは一つ先だけれど、座りたいので交差点を渡って始発から乗る。

3連休のうち2日は地元に帰った。
電車で2時間半。都内からすぐなのに半年に一度の頻度でしか帰っていない。
むしろ近すぎてとか、何もないからとか、足が向かない理由はいろいろあるけれど、姉に子供が産まれてからは帰りたいと思うことが多くなった。

甥っ子のなんと可愛いことか。
コロナ禍で生まれた彼とやっと会えたのは昨年、夏の旅行のときだ。
過保護すぎるほど食事にも環境にも気を遣う姉から仕事で病んでいたわたしに「旅費は出すから」と、誘ってくれた。
姉の寛大さに感謝しながら、初めましての甥っ子のかわいさにもうメロメロになった。
人見知りで、トトとママ以外の人に慣れていないと聞いていた。わたし自身もかなり人見知りを拗らせて育ったので妙な同族意識をもちながらも、距離感を誤っては一生嫌われるぞと怯えるように手を繋ぐ二人の一歩後ろを歩く。
しかし大好きなママ(姉)が親しげに話す見知らぬ女はどこか面影が似ていると気が付いたのか、少しずつ近寄って手を握ってきてくれたときはうれしすぎて泣くかと思った。かわいい。かわいい。
なんて愛おしいいのち。
ママになりたいと思う女性の気持ちがようやく少しわかった。
自分の子でなくても、一生懸命ちいさな身体を揺らしたり伸ばしたりする様子を見ると、庇護欲が溢れて止まらない。
かわいいなあーーー。
というわけで甥っ子にメロメロなアラサー女のことを果たして覚えてくれているのか。
ドキドキしながら挨拶すると、顔を顰められる。
あ、人見知りしてる。と彼のトトに言われて素直に凹んだけれど、姉から「マスクとったらいいよ」と自分の顔が見えてなかったことに気がついた。
マスクをとってもういちど。
甥っ子はちいさな口をむにむにさせて白い歯を見せてくれた。嬉しいーーー!!

旅行で撮ったあじさい



ショッピングモールで遊ばせると言う姉夫婦の車に揺られていると、建物が見えただけでテンションの高まりを見せる甥っ子。小さい子にとっては遊園地並みにたのしいよねぇ……。
キャンペーンゲームで射的をしたり、ゴルフのパターをしてみたり、ゲームセンターでアンパンマンを探したり、控えめながらもはしゃぎ回る甥っ子に癒されつつ、家族写真を撮りまくるカメラマンになっていた。

お昼を食べて公園に行くと、さっきまでお子様セットのうどんを啜りながら半分寝ていたのが嘘みたいに元気に走り回る甥っ子。
日陰で姉と話をしていると、目の前に来るたびに満面の笑みで手を振ってくれる。
て、てんし……。
姉が脱水を心配して声をかけると遠回りをしながらも素直に帰ってきて、ちゅーちゅーストローでお茶を飲む。
そのストローが出てくるキャップ懐かしいな……と思いながら、夜は祖父母の家に泊まりに行くので早々に家族団欒からおいとまをした。

また次も覚えていてくれるかな。
前はぬいぐるみをプレゼントしたけど、今回はもう目の前で選んでもらった。トミカを欲しがるなんて成長にもキュンとした。

祖父母の家に行くと、祖父が張り切って高級和牛を用意してくれていた。
思いの外姉たちのところにいて遅くなってしまったので、お酒も我慢してくれていた祖父に感謝。
祖母は暑さで肌が荒れるのを気にしている。
それでも付け合わせやサラダのドレッシングなんかのわたしの好みを覚えて作ってくれてありがたい。

両親が忙しくて、祖父母の家で育ったものだから、ついいつもの調子で寛いでしまう。
二人とももうすぐ80代に突入する。
いまは元気だけど、何かあったら、あってほしくはないけど、もしものときは、すぐに駆けつけて助けてあげたい。
子どもの頃から「東京に行きたい」と言っていたわたしの夢を、祖父母は応援してくれたし、いまでも「帰ってこい」とは言わない。
それだけでも、どれだけ救われていることか。
布団まで敷いてくれていて、至れり尽くせりすぎるのでせめて二人の話し相手になって夜が更けた。


昔は学校の後に祖父母の家に来ると、夕方、祖母と手を繋いで散歩に行くのが好きだった。
いまでも泊まりに来ると散歩をする。
けれど、いまは長距離歩くのが負担な祖母とは別に歩いている。
もっと二人が遠出できる頃に旅行とか連れて行ってあげればよかった。
そんな後悔がじわりと滲む東京への帰り道。

夕飯の買い物をしてから駅へ送ってくれた祖母から「お釣りだから」と1000円もらった。
え、いや、そんな、と思いながら受け取って、帰りのスーパーでありがたく使ってしまった。

そして今日、初めて新紙幣さんに出会った。
ううむ違和感すごい。
バスに揺られてスーパーで速攻使ってしまったけれど、しばらくの付き合いになるニューフェイスたちに早く慣れたい。




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