本の思い出「チョコレート・アンダーグラウンド」
今から5年ほど前でしょうか、当日中学生だった私は学校の先生にすすめられてアレックス・シアラーの「チョコレート・アンダーグラウンド」という本を読みました。訳は金原瑞人でした。
けっこう分厚い本で、たしか500ページほどあったと思います。その本を見た時は「え、こんなに長いの…💧」と思いましたが、読んでみると物語にどんどん吸いこまれてしまって、一日二日で読み終えてしまいました。
あらすじは現代のある国で、健康健全党という党が、チョコレートは健康を害するものであるからチョコレートやその他の甘いお菓子、飲料などを禁止するという「チョコレート禁止法」をだすという突拍子もないところから始まります。そんなばかげた法律、現実ではあるはずがありませんよね…。しかしこの物語の面白いところは、そんな現実とはかけ離れたような世界の話であって、現実の、今の私たちに通じるものがたくさんあるというところです。
ここからはネタバレを含みますのでご注意ください
さて、「チョコレート禁止法」などという法律が出来てしまい、街からはチョコレートが消え去りました。CMでは健全健康党が甘い物を蔑み、お菓子屋には健全健康党が推進する、栄養重視のバカみたいにおいしくない食べ物が陳列し、チョコレートを密売したり隠し持っていたりすれば牢屋に入れられ、洗脳教育を施される始末です。一体なぜこんな世の中になってしまったのか、チョコートが食べられないなんて、そんなのおかしい。主人公のハントリーとスマッジャーは立ち上がります。彼らは特殊ルートでカカオを手に入れ、チョコレートを密造し、地下にチョコレートバーを作り、仲間を作り、世の大人たちを動かし、健全健康党を倒して最後は自由を勝ち取ります。たったの一文で書いてしまいましたが、ここには様々な苦労があります。でもそれはぜひ本を読んで、道のりの長さを感じて欲しいと思います。
では視点を変えますが、そもそもなぜ「チョコレート禁止法」などという法律が出来てしまったのでしょうか。それ以前に、なぜ健全健康党なんかがそれだけの権力を持っているのでしょうか。
その原因は大人達にありました。もちろん大人達も、健全健康党なんて党は初めから良く思っていませんでしたし、アホらしとさえ思っていました。しかし、大人達は行くべき義務である投票に行かなかったのです。そこにつけ込んで健全健康党はぐんぐん票をのばし、結果「チョコレート禁止法」が制定されてしまったのです。そして健全健康党にも裏がありました。彼らはチョコレート禁止法を作ることで健康食品会社から莫大な利益を得ていたのです。
この小説は完全な空想のお話ではありますが、物語の骨組みの部分は確かな現実性を持って作られており、それがおもしろいところです。ここで書いた部分は健全健康党についてばかりですが、それに立ち向かう主人公達の動向は読んでいて胸が踊ります。私はこの本が少年少女向けの本の中では一番好きです。ぜひお時間がある方は一読してみてください。きっと、読み終わった後にはチョコレートを買いに行くと思います。