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マンゴー奮闘記

いつだったか、付き合っていた男に桃を食べるかと訊ねた時、アレルギーだからと断られたことがある。彼も元々は、それが好物だったのだけど、ある時に、アレルギーを発症してから食べられなくなったそうな。

その時は、「へぇ、不運だねぇ…。」としか思っていなかった。そんな不運な男と同じ不運に見舞われるなんて、人生何があるか全くわからない。

マンゴーは、時折意味のわからない生臭さを我々の口の中に広げてくれる物もあるが、当りはかなり美味い。あれほど甘美な南国の食べ物はないと思っている(個人的に、南国の食べ物は基本的にあまり美味しくないと感じている)。

そんな甘美な物を体が受け付けなくなってから、9ヶ月以上経った。その間、私は何度かマンゴーを食すのを試していた。

結果からいうと、惨敗だ。

私は、マンゴーが持つ毒素には打ち勝てない。非常に悲しい結果だった。

ドライマンゴー

2019.06.某日
私は、顔の腫れが完治したので、自分がフィリピンで大量に買ってきたドライマンゴー(家族用お土産)を食してみることにした。

「おそらく、マンゴーが原因だと思われるが、アレルギー数値は低いので、体調が悪いせいでアレルギー反応が出てしまったのでは…」と、医者に言われていたので、体調が完全万全のニート期間に試食してみようと、行動に移した。全くもってただの馬鹿だ。

一口齧り、唇にピリリっと軽い刺激が走った。

「ほう、美味い。やはり、フィリピンマンゴーがこの世で一番美味いマンゴーかも…」などと、唇に走った刺激など無視をして、私はドライマンゴーを一つ、また一つ、と食い漁った。

その1時間後、喉が痒くなった。

マンゴーケーキ

2019.11.某日
オーストラリアの暑い気候に曝されていると、マンゴーが食べたくなる。しかも、この時期は丁度、マンゴーが美味しい時期だったのだ。

私が働いていた店でも、マンゴーチーズケーキが期間限定で売り出され始めた。私には、それが輝いて見えた。食べたくて食べたくて仕方なかった。

そんな時、シフトは休みだが、店に顔を出さなければならないイベントが生じた。「これは、神様がケーキをお食べと言っているに違いない。」と、思った。そして、同僚と店でランチを食べる約束をした。

当日、食後のデザートとして、キラキラなマンゴーチーズケーキを食べた。

美味しかった。マンゴーは、素晴らしかった。

そんなマンゴーの楽き余韻も虚しいかな、私の喉はあっという間に痒くなり、少しの倦怠感が表れた。この時、「もうマンゴーは食べちゃいけないな。」と、私は諦めた。食べたい気持ちだけが宙に浮いて、どうしようもなくなってしまった。

まるで、失恋のようだ。

マンゴームース

2020.正月
姉家族が、新年ということで実家に来ていた。その日は豪勢な食事だったので、私もそれに便乗してデザートを作ることにした。

私の家族は、マンゴー好き好き人しかいないので、フィリピンで仕入れてきたマンゴーピューレを使い、マンゴームースを作った。非常に好評だった。

義兄には、「これ、家で売らないの?」と、言われるほど好評だった(売らない)。そんなに言われたら、私だって食べたくなるじゃない。


食べた。


目も喉も痒くなった。

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