フライパンで鍋パをやってみたら何でも話せる友達ができた話
今から6年半前。社会人4年目の12月。
当時の私は実家住まいだった。
料理も洗濯もやったことがなかった。
一人暮らしはしっかり者がするものだと思っていた。
ある日、一人暮らしの友達の家で鍋パをしようとなった。
みんなでスーパーで買い物を済ませて、家に着いてみてびっくり。
土鍋がなかった。
カセットコンロもなかった。
当然鍋敷きもない。
「え、鍋ないの?」
「うん、鍋ないよ」
なぜこいつは鍋パが発案されたタイミングで言わないんだ?
「え、じゃあ鍋どうすんの?」
「これ」
そう言った友達の手にはフライパンが握られていた。
え?
◇
ぶつ切りの野菜がぶち込まれる鍋。
もといフライパン。
美味しくて、楽しかった。
その時私は思った。
(土鍋がなくても鍋パってできるんだ)
(こいつが一人暮らしできるなら、私だってできるわ)
◇
帰りの電車の中で、早速住まい探し。
年末までに物件絞って、不動産屋に連絡して。
年明け最初の土日に内見をして、物件を決めた。
それまで私は一人暮らししたいと思ったこともなかったのに、フライパンで鍋パをした日から一ヶ月後には一人暮らしをしていた。
◇
それから2年後(今から4年半前)。フライパンの持ち主とはたびたび遊んで友情を育んでいたが、ある日突然に電話がかかってきた。
「(私)が住んでる駅、家賃高いんだけど!」
そんなこんなで、私が住んでる駅から、ローカル線で数駅離れた駅に、フライパンの持ち主は引っ越してきた。
それからは毎週のように会った。
ただの友達から、よく会う友達になった。
2018年のワールドカップは、バーでパブリックビューイングを楽しんだ。
そのバーが友達の行きつけになった。
私も一緒に、たびたび通った。
それから私は引っ越して、住んでるところは多少離れたけど、それでも自然に月に一度は会っていたし、決まっていつものバーに行った。
誰にも言えない話じゃなくて、誰にも言わないどうでもいい話ができる大事な友達になった。
◇
そして今日。私たちはいつから友達なんだっけ?なんて話して、フライパンで鍋パをした日を思い出したんだ。
これまで何回かこの話をしたことがあったけど、今日が一番面白かった。今日が一番笑った。
あと少しで、フライパンの持ち主は、しばし日本を発つ。
あの日、フライパンで鍋パをしたから。
私たちはかけがえのない友達になったんだ。
気をつけて行ってきてね。
ずっと友達でいてね。
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