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お名前は?

私は聴覚障害を持っています。
いまは人工内耳手術をしていて、装置を着けていればどちらかと言えば健聴者寄りかなと思います。

いまから書くのは人工内耳手術をする前、障害者手帳も手に入れたばかりで、耳が聞こえないことを人に言うのに慣れていなかった頃の話です。

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新卒では一般枠で内定をもらいました。
ただ、就職活動の時期からどんどん聴力が落ちて、入社する頃には通常の会話が困難な状況になっていました。

それでも内定先は受け入れてくれ、営業配属予定でしたがバックオフィス勤務になりました。

新卒といえば、怒涛の歓迎会。
何度目かの自己紹介で、2年目の先輩社員1人と新卒2人で3人グループになり、前に出て自己紹介をする機会がありました。

私達のグループは先輩が私達に「出身は?」「趣味は?」「意気込みは?」とインタビュー形式にして、新卒を紹介するということになりました。

難聴の人は共感してくれると思いますが、質問というのは恐怖です。
ただ聞くだけではなく、相づちで流すこともできず、聞き取って答えるということ。
当時の私には難しかったです。

それなのに私は先輩に耳が悪いことを伝えられずにいました。

不安に思いながらも事前にどの順番で、何を聞かれるのか確認しているうちにやってきた私達の番。

出身、趣味、意気込み。
出身、趣味、意気込み。
出身、趣味、意気込み。




「お名前は?」


聞き取れなかった。

出身、趣味、意気込みが来ると思ってたので違うことを言われてパニックになりました。

そしたら、同期の男の子が

「名前!名前!名前!名前!」


って手を叩きながら合いの手を入れてきてくれました。

今思うともしかしたらおかしかったのかも知れないけど。
恥ずかしかったと思うけど。

ただ、まだ出会ったばかりなのに瞬時に聞き取れていないことを察してくれて、咄嗟に機転を利かせて最後まで盛り上げながらフォローしてくれて。

本当に本当に助かった。
この同期の男の子とグループじゃなかったらどうなっていたんだろうと思う。

7年半前。
君はもう覚えてないと思うけど、あの時はありがとう。

耳が聞こえなくて、新しい環境で、希望の職種が出来なくて、どん底だったけど。
同期がいたから乗り越えられたよ。

#君の言葉に救われた #ありがとう #難聴 #人工内耳

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