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血だまりより。かの死体へ、愛を込めて。聖愛な歌を。|詩|21.06

人を殺すために生まれてきたような気がする。
いや、そんなことは全然ないんだけど。
ただなんとなく、漠然とずっと、そういう風に生きている心地がする。
包丁だってナイフだって、拳銃だって持ってない手で、ずっと何かを殺している。
味のしない生活で、緩やかに終わっていく水で、ぎこちなく食べていく毒で、ずっと。
何も持っていないこの手のなかに、包丁があるような錯覚。
いつだって先行するのは締める側の感触だ。
傷口から溢れる血と、一拍置いて知る刺突の感触。若しくは、見えない水を掴み、力を入れて分かる酸素の通る道。
変わっていく季節は、何かか死んでいくための優しくて酷い歌だ。
噛み砕いた飴の中の世界が口内を傷付ける様に、傷は余る。
来世はただの草花が良い。
なんだって殺してないよ。
自分だって他人だって世界だって。
それでも何かを殺している。行き場のない手には、まっかでねばつく血の感触だけがある。
笑おう。何かに爪を立てて。笑おう。
何もかも過ぎていく場所で、見えない死体と両手を繋いでワルツを踊ろう。おぼつかないまま裸足でステップを取るのだ。季節をバックミュージックに。
一生変わらないでいよう。人生なんて笑い飛ばそう。万歳三唱。夕陽なんて安物のペンキで塗りつぶそう。僕らの生に意味など無い。称賛も批判も蹴り飛ばす日々に拍手を送ろう。
血だまりより。かの死体へ、愛を込めて。聖愛な歌を。

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