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楫枕 地歌 歌詞単語分解 パート1

空艫(からろ)押す 水の煙の一方(ひとかた)に  
靡(なび)きもやらぬ川竹(かわたけ)の
浮節(うきふし)繁(しげ)き  
繁き浮寝(うきね)の泊り船(とまりふね)
寄る寄る身にぞ思ひ知る

パート1はこれだけにしたいと思います。

「単語 古文 意味」 でスマホ検索して、複数の意味が出た場合はじぶんのカンで選別しました。

このパートの最重要単語は川竹になるのだと思います。

今までの私でしたら、水面から顔を出している単なる植物でしょとおもっておしまいであったとおもいます。

● 空艫(からろ)… 櫓(ろ)を浅く入れてゆっくり漕ぐこと。

● 押す … 櫓を使って舟を進めること。
押すという言葉にこういった意味がちゃんとありました。歌詞のうしろの方に泊り船とあったので、止まってるのか?とおもってしまいましたが動いているようですね。

● 水の煙 … 1.水面にたちのぼる霧 
2.水が細かく飛び散って煙のようにみえるしぶき。飛沫。すいえん。2の例「滝つぼから水煙が立つ」

● 一方(ひとかた)に … 
一つの方向、一箇所にかたよる、ひとところ。

● 靡(なび)き … なびくこと。

● やらぬ … 動作が完了する意味のや(遣)る+打ち消しの「ず」の連体形の「ぬ」。その動作がおわっていない意をあらわし、次の名詞を修飾する。まだ…しきらない。次の名詞を修飾するとのことなので、次の川竹にかかるのだとわかりました。

● 川竹 … 1.川のほとりに生えている竹。
2.〈川竹の流れの身から〉遊女。遊女の身の上
例「いずれも−なれば、ただただ後世を願い」 
歌詞の中に遊女という言葉はでてこないのに、この歌が遊女の身の上を歌っているとわかるのは、この川竹からなんですね。
(参考)
川竹(かわたけ)の流れの身 … 遊女などの定めない身の上の意の「流れの身」に、
枕詞「かわたけの」がついたもの。
遊女など定めない身の上。浮き川竹。流れの身。
川竹の流れの女。川竹者。川竹。
※謡曲・班女(1435頃)
「定めなき世といひながら、憂き節繁き川竹の流れの身こそ悲しけれ」
←楫枕の歌詞にも浮節繁きと出てきます。

● 浮節(うきふし)… 「浮く」「ふし」「沈む」「よ」「流す」は「川竹」の縁語。
「浮き」と「憂き」、
「節」と「ふし(ことがら、状況)」が懸詞。

「よ」というのは竹の節と節の間のこと。「世」と懸詞になる。

● 繁(しげ)き … 多い。絶え間ない。

● 浮寝(うきね)… ねどころの一定しないこと。鴨など水鳥が水の上で浮いたまま眠る習性を見て、不安定で、気分の落ち着かないこと、と考えたところから出た表現。そこから、上陸せずに船中で仮泊する意に用い、旅中の心細い境涯や悲しみを表現したり、恋のため眠れないことをたとえるのに用いたりした。

平安時代になると「憂き」に掛けることが多くなり、つらい独り寝の形象として用いられたり、寝所が一定しないこと、かりそめに寝ることとなって気まぐれの情事の意で用いられた。

● 泊り船 … 停泊している船、ふながかりした船、かかりぶね

● 寄る … 数が加わる。多くなる「しわがーる」「年がーる」

〈訳してみたもの〉
櫓を浅く水に入れて舟を進めていると、
水煙が立ちのぼる所がみえる
どこになびくでもなく、
川竹がながされていくのが見える
憂いごとが多く、
舟を停めて寝るときも心が落ち着かず、
安らいで眠れない夜ばかりだ
この川竹の身の人生の憂いを、
年々身にしみて理解するようになったことだ

遊女の憂いの歌詞がパート2に続きます。

また、遊女って遊郭にいるひとじゃないの?
なんで舟にのってるの?
という疑問にはこちらです↓


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