100万回笑った猫、ブス子
100万回、笑う猫がいました。
キジトラで長い毛はバサバサで顔はぺっちゃんこでしたが、とても優しい女の子でした。
その猫はみんなからブス子と呼ばれていました。
ブス子は生まれた時にお母さんに言われました。
「お前はブスだからいつも笑っていなさい。笑っていれば誰が助けてくれる」
ブス子はお母さんの言う事を守って、どんな時も笑うようにしました。
みんなから意地悪されても。ご飯をもらえなくても、雨が降っても、いつもニコニコしていました。ブス子が泣いているのを誰も見たことはありません。
ある時、「いつも笑っている猫がいる」と王子様に拾わてお城へ行きました。お城の中では王様がいつも怒っていて、みんなピリピリしています。ブス子はみんなにも笑って欲しいと思って笑顔でいました。
しかし、それを見た王様は
「なんだ、そんな不細工な猫は。ヘラヘラ笑っていて気持ち悪い。どこか捨ててしまえ。」
それを言われ王子様は「ごめんね。」と言ってブス子を元の場所に戻しました。
ブス子は思いました。
「私がもっと可愛かったら、みんな笑顔になれたかな。」
ブス子は神様にお願いしました。
「神様、次は可愛い猫にしてください。」
…
ある時、ブス子は「可愛い猫がいる」と船乗りに拾われ世界中を一緒に旅をしました。ブス子はお母さんに言われた事を忘れずニコニコと笑っていました。
しかし、行く先々でケンカが起こります。
「その珍しい猫を売ってくれ。売らないなら、その船ごと海に沈めるぞ。」
とうとう船乗りは困り果てて、「ごめんな。」と言ってブス子を売ってしまいました。
ブス子は思いました。
「私がもっと賢かったら、みんな笑顔になれたかな。」
ブス子は神様にお願いしました。
「神様、次は賢い猫にしてください」
…
ある時、ブス子は「賢い猫がいる」とサーカスの劇団員に拾われ一緒にショーをしました。ブス子はニコニコ笑いながら劇団員の指示に従って踊っていました。
しかし、問題が起きました。
「この猫を拾わったのは俺だ。給料をもっと上げろ。じゃなければサーカスを辞める。」
劇団員はサーカスを辞めて、仕事がなくなり、何も言わずにブスコを置いてどこかへいきました。
ブス子は思いました。
「私がお金持ちだったら、みんな笑顔になれたかな。」
ブス子は神様にお願いしました。
「神様、次はお金持ちになれる猫にしてください」
…
ある時、ブス子は「お金もちになれる猫」として悪い人に飼われていました。悪い人はカジノにブス子を連れていきお金を稼いでいました。その裏で泣いている人を見てブス子は逃げ出しました。
しかし、悪い人に見つかり連れ戻されました。
「お前は金を呼ぶ猫だ、死んでもはなさん」
その後、悪い人は恐い人に銃で撃たれてしまいました。
ブス子は思いました。
「私が迷惑かけなかったら、みんな笑顔になれたかな?」
ブス子は神様にお願いしました。
「神様、次は誰にも迷惑をかけない猫にしてください」
…
ある時、ブス子は「誰にも迷惑をかけない猫」としておばぁさんと暮らしていました。ブス子はいつもニコニコとおばぁさんの膝の上で寝ていました。
しかし、ブス子は寿命でおばぁさんよりも早く旅立ちことになりました。
「ひとりぼっちになるのは寂しい」
おばぁさんは泣いていました。ブス子はおばあさんを悲しませた事が残念でした。
ブス子は思いました。
「人よりも長生きしたら、みんな笑顔になれるかな。」
ブス子は神様にお願いしました。
「神様、次は長生きする猫にしてください。」
…
ある時、ブス子は「長生きする猫」として小さな女の子に飼われていました。女の子はブス子といつも一緒で、悲しいときも病気の時も一緒にいて、2人で大きくなりました。姉妹のように育っていきました。
しかし、女の子は大きくなり結婚すると、ブス子と離れて旦那さんと遠くの町で暮らしました。
「また会いにくるからね」
女の子は悲しそうな顔をしてましたが、ブス子は女の子がキレイなドレスを着て行くのが嬉しかったです。
ブス子は思いました。
「私もきれいなドレスを着たら、みんな笑顔になれるかな」
ブス子は神様にお願いしました。
「神様、次はきれいなドレスが着れる猫にしてください。」
…
ある時、ブス子は誰の猫でもない。野良猫になりました。みんなからブスと呼ばれ意地悪をされても、ご飯をもらえなくても、ずっとニコニコ笑っていました。
ブス子は思いました。
「ずっと、笑ってきたけれど、みんな最後は悲しい顔をする。どうやったらみんな幸せにできるんだろう」
ブス子は少し疲れてきました。どんなに神様にお願いしても、誰もずっと笑顔ではいてくれません。
可愛くなっても、賢くなっても、お金持ちになっても、誰にも迷惑をかけなくても、長生きしても…
ブス子はもう笑う事をやめて、1人でいる事にしました。ブス子は眠たくなりました。
すると、1人の男の子がブス子を抱き上げました。
「なんて可愛い猫だ。君の名前は?」
ブス子は驚きました、今の自分はノミだらけの不細工でだれも相手にしないブスな猫だからです。
男の子は言いました。
「君は笑った方がもっと可愛い。ウチにおいで」
男の子は笑う事をやめたブス子を一生懸命にお世話をして、毎日楽しかった事を話して、いつも笑顔でした。
ブス子は男の子が好きになりました。こんなにも自分に愛情をくれる人は今まで誰もいなかったのです。
男の子は言いました。
「君の名前はサクラにしよう。可愛いきれいな名前だろ」
ブス子は嬉しくて嬉しくて初めて泣きました。
男の子はぎゅっとブス子を抱きしめてくれました。
ブス子はもう神様にお願いはしませんでした。
もう無理に笑う事も、誰がを笑顔にする必要もなく、この男の子と一緒にいたい。ただそれだけでした。
ブス子は安心して眠りにつきました。
…
…
どこかの結婚式
大人になった男の子がいいました。
「今日の君はとてもキレイだ。ドレスもとても良く似合っている」
「僕が小さい頃に一緒にくらした猫にも見せてあげたかったよ」
花嫁さんは笑うと一言いいました。
「神様が叶えてくれたの」
おしまい。
ブス子は看板猫で15年以上生きて、私達を見守ってくれました。
そして、生まれ変わって今、一緒にくらしています。
猫は100万回生まれ変わってまた愛してくれた人の所へ来てくれます。
全ての猫ちゃんが幸せでありますうに。
金城美衣子