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page 38 Story of 永遠 8/19
夕暮れの音楽室
柔らかなオレンジ色の光
窓から聞こえる部活動に取り組む学生達の声
廊下を走る足音、声、
遠くから聞こえる笑い声…
きちんと並んだ机には
もう誰の姿もない。
俺は一人
ピアノの前に佇んでいる。
カタンとピアノの蓋を開けると
鍵盤がずらりと並んでいる。
そこに立ちつくしたままポーン・・・と
人差し指でピアノのキーを1音奏でると、
死んでしまった恋人との想い出が甦る。
ふっ…と出るため息で椅子をギィと引いて座り、想い出を懐かしむように目を閉じる。
その気持ちを強く断ち切るように目を開いて
弾き始めの音に想いを込める ♪
♫
♪ 。 ♫
・♪ °。 ♪♪
° °。・
。
零れ出すように想い出す彼女の面影
。
°
♪
♪ ♪
。♪。・ °°
♫
夢のように柔らかくあたたかい笑顔
回想シーンのような散り散りの風景は
木漏れ日の光に色を変える。
♪
°・。 ♪。
♪
♪
。♪
・°
♪・。°
°
まだ終わりにしたくない
まだ手放したくなんかない。
だけど音は空に向かって飛び立ってしまう。
♪
°
♪ 。° ・・°°
。
静かにペダルを上げて、音の飛び立った先を見つめる …
―――「 OK ‼︎ 」―――
――――
――
・・・何だろう
すっと頬を伝う温かさに 我に返る。
戸惑いながら頬に手をやると指先が濡れた。
俺…涙・・・?
それをただ見つめながらしばらく呆然としていた。
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