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page 66 Story of 永遠 9/3




車の中で泣き続ける美月ちゃんとは裏腹に、窓の外は宝石をばら撒いたような、夜景が広がっている。



多分、こんな風に弱ってる時、気持ちの隙に入り込んで「好き」って言って、こっち向くように仕向けたりするもんなんだろうな…普通は。


俺は美月ちゃんを好きだから、そんな手を使うのも有りなのかもしれない。

けど、そんなやり方全然面白くない。

それじゃ、俺は一体どうしたいんだろう。


身体を前に傾けて、ハンドルを抱きしめる体制で想いを巡らせる。


俺は美月ちゃんの涙が少し落ち付いてきた頃に、車の中に有ったティッシュを渡しながら伝えた。



永遠「あのさ、あの話…」
美月「あの話?」

永遠「17秒、気持ちを感じたら現実化が動き始めるって…あの話」

美月「え?、もしかしてエイブラハムの17秒瞑想?」

永遠「それ!エイブラハムの法則!」

美月「永遠くん、あの本持ってるの?」

永遠「いや、持ってないよ。美月ちゃんの“家の鍵かけ係”の時に読んだ。
レッスンの中で教えてくれたのって、あの瞑想法だよね?」


美月「あ、…うん」


永遠「美月ちゃんはさ、今日、自分は寂しかった事が分かったって言ったよね」

美月「うん…」


永遠「それなら、今より少しだけハッピーな現実を作りたいって望めばいいんじゃない?」


美月「うん。凪さんとのアンサンブルでそんな風に思った…」


      永遠「んじゃ、ハイ!」

         美月「え?」



俺はシートベルトを外して美月ちゃんの方に身体を向けて、両手を広げた。


永遠「17秒、抱きしめる」

美月「え!、」

永遠「17秒、俺の腕ん中で幸せを感じなさい」

美月「えっ?、」


永遠「なに、エイブラハムの法則って、あの本読んだだけで信じてないの?」

美月「え、そういう意味じゃないよ」

永遠「なら早く!…ほら」


俺は美月ちゃんの腕を引き寄せて自分の中にすっぽり彼女を包んだ。
本当は鼓動が高なって煩いけど、平気なふりをした。



永遠「一人なんかじゃない 言って?」

美月「ひ…一人じゃない」

永遠「私は常に助けてもらえる 言って」

美月「わ…たしは助けてもらえる」

永遠「私は愛されてる 言って」

美月「愛…されて…る」



永遠「1、 2、 3、 4、 5、 6、 7、8、…」




俺はこっそり腕の中の彼女との未来を願った。
この腕に抱いてる美月ちゃんとの未来を。



永遠「9、10、11、12、13、14、
15、16…」


どんな法則だって、実験しないと分からないだろ


      永遠「… 17 …」


    黙って俺に愛されてたらいい。


     永遠「…プラスone…18」


     潤った瞳と目を合わせる。


         そして


     前髪をよけて額にキスをした。


唇を離して何が起きたか分からないという…
揺れる瞳を見つめ続ける永遠の一瞬。



永遠「…18秒の法則に変更!何故なら俺は“とわ”だから」



    急に恥ずかしくなって来た。

       やらかした。

自分で言って、自分で恥ずかしくなるやつ。

   ハンドルに額を付けて目を閉じる。


     美月「…とわの…法則?」


     永遠「うん。

 18を“とう”と“わ”に分けて…みた…」


我ながら何だこれ(笑)ハンドルに顔をつけたまま呟いた。
小学生みたいな事やってるし俺(笑)





   美月「…私、 今の 夢で… 見た」





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