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page 68 Story of 美月 9/4



凪さんとの打ち合わせが終わって席に戻ろうと歩き出した。

その瞬間から永遠くんの姿が目に入って、思わず凪さんの後ろに隠れるようにして歩く 。


隠しきれない想いは、このドレスなんかじゃ、すごく頼りなく感じた。


  ドライブで夜景を見に行ったあの夜、

平常心を保っているふりをしてたけど、本当は死んでしまいそうなくらい胸がドキドキしていた。


「こんにちは」なんて、
いつものように微笑んでも、本当は内心永遠くんの笑顔に胸の鼓動が騒ぎ過ぎて苦しかった。


だってこの前抱きしめられた感触がまだ残ってる。


17までカウントする囁くような低い優しい声がまだ耳から消えてない。


こんな風に優しい瞳の近距離に居たらドキドキが聞こえてしまいそうだから、カムフラージュに、
どうでもいいドレスの話題を勝手に口が話し始めたりして…


ドレスが似合ってるなんて…
そんな言葉は社交辞令だって分かってても、驚く程胸は正直にドキドキと音を立ててた。


そんな風に優しくショールをかけてくれて、

座ろうかって椅子を引いてくれて…、

その彼の行動のいちいちに心が反応して騒がしい。


   照明が落ちて新郎新婦が登場した。


どんどん進行して行く流れに気持ちが全然ついて行けなくて意識の全てが左側に座った彼に持っていかれてしまいそうになった。


「それではanswer様よりお祝いの言葉を頂きたいと思います。代表で、榊 永遠さん宜しくお願いします」



永遠「えー、
この度は本当におめでとうございます。
新婦の橘さんとは…・・・、

―――――

―――



――」



凪「美月ちゃん、
永遠の挨拶が終わったら移動ね…
顔赤いけど大丈夫?
もしかして緊張してる?」


       美月「あ…」



       そうだった。

       私の今の役割は

   この会場の方々に音楽を届ける事

    純粋な想いを音で伝える事

    この瞬間を心から味わう事



永遠「ではanswerから感謝の気持ちを込めて歌のプレゼントをさせて頂きます。
タッチーがこの曲に出会って私の未来が開けたと、以前に言ってくれた事が有ったので、全員で“answer”を歌いたいと思います」


    会場から歓声が上がった。

  新婦さんが口元を手で押さえて驚いてる。

     しっかり演奏しなきゃ… 


グランドピアノの前に椅子が4脚配置されている。

answerのメンバーはその椅子に座って歌うという演出になっている。

ピアノまで歩く途中、永遠くんと目が有った瞬間、凜とした表情で微笑んだ。


     私は私が思う道を開いて、

   手応えを味わって生きて行きたい。


        強くなりたい


    本当の優しさを伝えられる位強く 


    前を見て本当の自分の生きる!
 今日は私にとってもそんなスタートにしたい。


私の中に生まれたエモーションを止める事は、もう出来ない。



見上げた頭上のシャンデリアが始まりの詩を歌ってる。

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