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PTA本部役員の闇 20時間目 〜この話は全てフィクションです〜

桃華は、愛の2番目の娘。小学4年生だ。

桃華は、朝起きて元気のない母の顔を久しぶりに見た。
愛はうつむき、何秒かに1回はため息をついている。
昨晩のPTA本部役員のくじ引きの結果が、まだ母の心に暗い影を落としているのがひしひしと伝わってくる。
朝食の時、愛が父親に「悔しくて眠れなかった」と言っていた。
「PTA役員」とは、大人でも受け入れがたい担当、結果なのだろうと、子どもながらにわかった。

「眠れないほどのくやしさってどんなんだろう…」
桃華は、暗い気持ちになっている母親を心配しつつ小学校に登校した。

桃華のクラスには人だかりが出来ている。
野球部の男子が喧嘩をしているわけではなさそうだ。
「何か起きているのか」と思いながら、ゆっくりと教室に入ると、クラスメイトが一斉に桃華を見る。

人だかりの中心になっている女の子が桃華に声をかける。
それは、PTA役員選挙担当の宝塚さんの娘だ。

宝塚の娘は、目を大きく見開き、オーバーリアクションで、隣のクラスまで聞こえる程の声で話をしている。

「桃華ちゃん!昨日のPTAのくじ引き!すごかったんですってね!桃華ちゃんのママが、すごい確率のくじを引き当てたんですって!それはそれは、すごい事だって、私のママが言ってたわ!」

「昨日の話か…」正直、桃華にとって、触れられたくない話題である。
しかし、勉強でもスポーツでも桃華にかなわない宝塚さんにとって、とやかく言える絶好のチャンスなのだろう。ここぞとばかりに身を乗り出して話をしている。昨夜、彼女の家では家族総出で、そのテンションで、くじ引きの話をしていたのが目に浮かぶ。

母親のショックを知っているだけに、桃華はその娘とは目を合わせずに「はぁ」と空返事をして、自分の席に座った。

「今日、宝塚の娘がこんな感じで話をしていたなんて伝えたら、また母親は元気を無くすだろうな」と桃華は授業の準備をしながら、そう考えた。

✓愛のメモ:今日の教訓
✓家庭内の話は、即座に子ども達に伝わる。
✓親の役割からくる感情や行動は子どもにはとても影響力がある。
✓大変な時にその人がどのような対応をしたかで今後の付き合いを考える。


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