早稲田大学でのアクションラーニングの歩み(2016年6月-2020年7月)
早稲田にアクションラーニングを導入してちょうど4年経ち,いろいろと工夫した結果エコシステムも一応完結したと思えるので4年間の歩みを振り返ってみたい.
<2016年度>
夏クオータの「リーダーシップ開発2(LD2)」で早稲田大学で初めてのアクションラーニング.初めてなのでALコーチや模範メンバーはまだ早稲田にはおらず,立教大学でまだ担当していた私のゼミ生に来てもらった.また,アクションラーニングに興味のあった都立大のゼミ卒業生も志願して終盤に参加して,私の勤めた3つの大学の(元)学生が参加する記念すべきイベントにもなった(写真上).
夏クオータでALに習熟した学部学生6人が中核となって,秋クオータから始まる「他者のリーダーシップ開発」で12人ほどの初心者とともにALを継続的に行った.この授業で受講生のコミットメントは非常に高く,早稲田大学ティーチングアウォードを受賞した.このときから「他者のリーダーシップ開発」は実質的に私のゼミとして運営することにした.
<2017-18年度>
引き続きLD2の8週間16コマ(それを夏クオータと冬クオータに年2回転開講)をまるまるALにあてて,支援的リーダーシップを学ぶ.このころWIAL-JAPANから学生ALコーチ認定制度のお話をいただいた.ちょうど,ALCトレーニングが十分でない学生を企業や官庁の研修に連れて行って不評で研修発注をリピートしてもらえない等の経験もしたところだったので認定制度はちょうどいい機会だった.また17年度からは早稲田大学の職員研修も継続的に依頼されるようになり,認定されたコーチの活躍の場が増えた.
<2019年度>
「リーダーシップ開発」の科目を再編成するのと同時に,アクションラーニングを「LD2」から「他者のリーダーシップ開発1」(OD1)に引っ越しした.これは「リーダーシップ開発」の受講生が徐々に増えていくとLD2のクラスに入る模範ALコーチやオブザーバの数が毎年足りないことが目に見えているので,ALを学ぶ場所をOD1-2に限定して,先輩コーチ・オブザーバを安定的に確保したほうがいいと判断したからである.学生ALコーチ養成課程としては,OD1でALコーチ初歩,OD2で外部クライアント探し・研修実践・効果測定.OD2の次(夏なら秋,冬なら春)のOD1に模範ALコーチやオブザーバに入り,企業研修には見習い(メンバー)として所定の回数以上に参加して,パフォーマンスが良好であれば冬または春の認定試験を受ける.認定されればALコーチとして企業研修や大学職員研修などでALコーチとして活躍する.という流れがやっとできあがった.ここでも,クオータ制で速いスピードでエコシステムが回せることが幸いしていると思われる.毎年3月に学生認定コーチ数名が卒業して,在学コーチ数が減るが,夏の認定試験で回復し,例年秋冬クオータには全学で十数名から二十名程度の学生認定コーチが在学するようになった.
また,ゼミとして運営してきた「他者のリーダーシップ開発」は,授業本体は2クオータつまり半年で終わってしまうが,そのあと後輩のAL指導を行なったり,企業研修・職員研修に参加するときに集まったりで,意欲の高い学生が在学中ずっとゼミ関連活動にとどまってくれるので2年や3年続く学部の専門ゼミと比べても全く遜色ないか,ある意味ヨリ質が高い関係性になっていると思う.正課のOD1-2が終わってからも卒業まで食事会や旅行もしばしば開催されている.OD1-2既習あるいは並行履修は「リーダーシップ開発」のTAになる条件でもある.
19年度はまた,学部の専門ゼミでALを行なうことでゼミ生の関係性を手早く改善して学習するコミュニティを作り,ゼミの生産性を上げるお手伝いをOD生と私が行なうことを始めた.18年度以前にもOD生と学部専門ゼミ生の個人的繋がりで行なったことはあるが,そのゼミの教員の公認があったほうが成果が把握しやすいのでこのときから専門ゼミの担当教員と直接に交渉するようにしたのである.立教大学経営学部で1件と,中央大学経済学部で1件受注し,中央大学については20年度にもリピートしていただいた.
<2020年度>
春夏のOD1/OD2はいずれも全週Zoomで行ない,学生はZoomでのALセッションに完全に慣れた.むしろ対面でのALセッションの経験がない者が大半になってしまって,将来対面で初めてALを行なうときにどんな感触になるかが楽しみである.専門ゼミでの組織開発については新たに早稲田大学商学部で1件受注し,zoomで実施した.
もともとALを導入したのは(立教時代にも)TAの養成のためであったが,19年度まではTA業務とOD履修の順序が逆転したり,結局ODを履修しないまま終わるTAが発生したりしていた.20年度からはALをODに移転したこともあって,やっと「TAはODを既習または並行履修」という内部ルールを遵守できるようになった.早稲田生にとっては立教生以上に「相互支援」を身につけることが重要なので,TA養成を離れてもALの意義は大きい(写真下は20年度7月認定コーチ仲間入りした3名.半年前の前回は6名だった.年2回受験のチャンスがある.これもクオータ制で多くのLDP科目が年2回開講しているからである.).
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