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早稲田LDPにおけるアクションラーニングの意義

201912alc

12月25日に早稲田の学生ALコーチ認定試験がありました.多数の社会人の方々のご参加を得て,しかも久しぶりに全員(7人)が合格する快挙でした.これで,いまから3月までは,合計22人の認定学生ALコーチが早稲田大学に在学していることになります.次回の認定試験は夏を予定しています.

そもそもどうして早稲田リーダーシップ開発プログラム(LDP)のなかで1科目(2単位)をアクションラーニングコーチの養成に割いているか.LDPには自分のリーダーシップ開発を学習目標とするLD科目群(3科目)と,LD科目群前半修了を前提として「他者のリーダーシップ開発」を学習目標としたOD科目群(6科目)があります.パーソナル・コーチングの初歩はLD科目群の最初にあり,他方アクションラーニングコーチング(アクションラーニングコーチの養成)は,OD科目群の最初に置かれています.認定試験を受けたのはOD科目でアクションラーニングコーチとしての腕を磨いた学生たちです.


LDPに入門した学生は,まず最初の科目でパーソナル・コーチング(とリーダーシップ理論や論理思考の初歩)を学んで,目標設定や相互支援の重要性や質問の力を体験します.その次の学期でPBLでリーダーシップを発揮してみて,さらに次の学期には,今度はOD科目でアクションラーニングで目標設定・相互支援・率先垂範と質問力を引き続き学びながら,新たな要素として「コンテンツに介入せずプロセスに介入するだけでも生産性向上に貢献できる」ことを体験します.


この新しい要素である「コンテンツに介入せずプロセスに介入するだけでも生産性向上に貢献できる」のを知ることは,何に役立つのでしょう.LD授業の2科目目は企業クライアントを招いたPBL型の授業なのですが,教員もTAもそこでは受講生の提案のコンテンツにはほぼ介入しません.受講生に「この提案はどう思いますか」と尋ねられると,TAも教員も,踏み込んだフィードバックする誘惑に駆られがちですが,そこをぐっとこらえるのには,ALコーチとしての成功体験つまりプロセスに介入するだけでも生産性向上に経験できたという経験が役立ちます.私がアクションラーニングを知ったのは2008年ですが,この点については当初から注目していました.つまりTAやリーダーシップ教員のFDにとても向いているということです.


上記はTAの事前研修としてのアクションラーニングの意義ですが,授業運営だけでなく,アルバイト・インターンシップさらには就職してからも,相手の仕事内容の詳細は分からなくても,また相手からの支援要請が明確でなくても,相手の生産性向上に役立てるような質問力が役に立つ場面が多いことは学生もすぐに気が付きます.OD科目の最初のOD1でアクションラーニングコーチのスタンスや技法を学んだあと,2番目のOD2では,「自分の関わっている,ないし関わっていた団体・組織(高校・大学の部活,競技指向のサークル,インターンシップ先,アルバイト先など)でアクションラーニングを使ったリーダーシップ研修を実施して効果測定を行なうことを最終課題としています.その最終課題に向かう途上で,他大学を含む学部専門ゼミでのリーダーシップ研修も毎年行なっています.そこで,クライアントを探すところは私が担当して,学生たちには,クライアントが決まったあとは何をするかを体験してもらい,最終課題への第一ステップとするわけです.


そこまでの過程で社会人が含まれているグループでアクションラーニングコーチを務める機会も何度かあるので,冒頭に紹介した認定試験では,参加なさった社会人ゲストの方々は,学生ALコーチの練度と落ち着きぶりに驚嘆してくださることがしばしばです.しかもそこで充実したセッション体験をなさるので,自社にこの学生ALコーチを呼べば素晴らしい研修ができるのではないかと考えるかたも少なくないようですが,どっこい職場にいきなり学生ALコーチが(認定資格をもっているとはいえ),インターンよりいわば格上の存在として入ってくるのにすぐには納得しないかたがほぼ確実にいますので,すぐにはスムーズに実行しづらく,そのハードルを下げるような導入部分を設けることが必須になるでしょう.

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