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ケイン号とバウンティ号の叛乱 (2017年12月のブログより再録)

アマゾン・プライムに「ケイン号の反乱」が入っており懐かしくなって見た。これに限らないが,学生時代に見たものは、「あの頃はいったいどこを見てたんだい」ということばかり。この映画も例外ではなく、神経質な艦長(ハンフリー・ボガート)のいやな感じだけが記憶に残っていたのだが、今回は細部まで面白かった。素人考えだが、船は大きな密室で、長時間を一緒に過ごさざるを得ないうえに、軍艦では指揮命令系統が厳しくプレッシャーや危険も大きく、しかも脱走という選択肢は事実上無いため反乱が起きやすそうな気がしてくる。軍艦での反乱ものでは、この「ケイン号の反乱」と英国艦での史実にもとづいた「バウンティ号の反乱」が特に有名で、今回のケイン号の反乱のなかでも、日本語字幕ではすっ飛ばされているが「彼はブライではないから」というセリフが出てきたりする(ブライとはバウンティ号の艦長のことで、バウンティ号の叛乱については既に書いた) この2つ以外にも、例えば潜水艦もののフィクションで「クリムゾン・タイド」でも反乱が題材になっている。  

(ネタバレ注意) さて「ケイン号の反乱」だが、士気のあがらないオンボロ掃海艇のケイン号に新しい艦長が着任して、成果も上がり部下にも信用され始めるのだが、徐々に艦長に異常行動が目立つようになってきて・・・というストーリー。「バウンティ号」と違って反乱での流血はなく、むしろ帰港してからの軍法会議やその前後の将校たちの人間関係が主題。軍法会議では、断然有利だった艦長がつい相手弁護士の挑発に乗ってしまって形勢が変わるというところは”A few good men”に似たところもある。フレッド・マクマレー、ホセ・ファーラー、ヴァン・ジョンスンといった脇役たちも非常に上手い。まだ売れない頃のリー・マービンとクロード・エイキンズもふてくされた水夫役で出てきて楽しい。  「ケイン号の反乱」の、当時にしてはテンポの早い冒頭の数分にナイトクラブで歌う歌手(若手将校の恋人役)が出てきて、”I can’t believe you are in love with me”を歌う。この曲はこの映画で有名になったらしい。曲がとても気に入ったので、ナイトクラブのシーンを繰り返し見たのだが、劇中で歌っている最中に喧嘩中の恋人が表れて彼女の顔色が変わったり、歌詞をあてこすったり、歌いながらも彼の行方が気になって目で追ったり等となかなか細かい演技があるのにも気づく。ついでディーン・マーティンがこの曲をカバーしているとわかったのでYouTubeで探してみたら素晴らしい歌唱だったので勢いで彼のCDボックスセット(二千円弱)を買ってしまった。馬鹿馬鹿しい曲も多いが歌はやっぱり相当上手い。フランク・シナトラなんて問題じゃない(笑) 細かい話だけど、確か別の映画「LAコンフィデンシャル」のなかで、ケビン・スペーシーが、自分の趣味なのか脚本どおりなのかディーン・マーティンを礼賛する場面があるのが記憶にのこっていたが、今回納得できた。

(以上2017年12月4日のブログから)

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