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子を棄てる

愛しの子、最愛の子と言いながら
その子を棄てる親がいる


積年の労苦は人を鬼と化してしまう。
身ごもった時の祝福も、体内の生命を感じたその喜びも忘れさせ、打ち砕いてしまう積年の労苦。
なぜ私ばかり、どうして我が家ばかりと苦しみ悩み悲嘆に暮れる歳月は人を鬼にしてしまう。


間違っている、違っているよと言いはしない
でも正しいとも言えはしない


拾い上げた芋虫の子を育て上げた百鬼丸の父親代わり、寿海医師の気持ちを思う。
子を棄てた芋虫の子の母、縫の方の悲痛を感じる。
理解はするが、腑に落ちぬ持って行きようのない悲しさがいつも私の身体を駆け巡る。


あなたの母は悪くない
あなたの父も悪くない
神の定めたタイミング
いるならそこに鬼はいる


疲れた心を癒すために少し休ませてあげなさい。
母はいつまでもあなたの母。
父はいつまでもあなたの父。
枯れてしまった涙がいつかまた湧き渇いた心を癒す時が来る。
だから、少し休ませてやりなさい。


一言詫びてあげなさい
子は親を愛し慕い毎夜夢を見続ける
好きな親だから幸せを願う
親が疎むその前に自身の存在を疎んでいる


あなたの子どもは百鬼丸のように日々見えぬ魔物と戦っている。
たとえ身体は元には戻らなくとも後悔せぬ未来のために。
ゴールを迎えたその時に互いが悔やみ泣かぬように。
そう、互いが悔やみ泣かぬために。

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